メディカルニュースまとめ:高齢者の多剤服用対策GL、検討開始へ 日刊薬業 2017年08月24日

本日はこちらのニュースです。

高齢者の多剤服用対策GL、検討開始へ 日刊薬業 2017年08月24日

 

【概要】

厚生労働省は、9月1日に「高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成ワーキンググループ」の会合を開く。高齢者の薬物動態などを踏まえ、「やめどき」や「減らしどき」も検討する考え。

検討が必要な薬効群:傾向血糖降下剤、循環器用薬(高血圧の薬など)、認知症治療剤、睡眠導入剤抗不安薬等、抗菌剤

 

【コメント】

多剤服用対策は、薬剤師を中心としたチーム医療、地域医療のキーワードになっている取り組みです。

多剤併用により患者に有害事象が起きていることは「ポリファーマシー」と呼ばれており、それを改善することがこの取り組みの目的です。

診療報酬でもこの取り組みを活発化させたいらしく、2016年度の改定では「薬剤調整評価調整加算」という名前で、下記の要件を満たす多剤服用対策の取り組みを行った病院は、退院時に1回250点の算定が可能になりました。

○薬剤総合評価調整加算の要件

イ 入院前に6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されていた患 者について、当該処方の内容を総合的に評価及び調整し、当該患者の退院時に処方 する内服薬が2種類以上減少した場合

ロ 精神病棟に入院中の患者であって、入院直前又は退院1年前のいずれか遅い時点 で抗精神病薬を4種類以上内服していたものについて、退院日までの間に、抗精神 病薬の種類数が2種類以上減少した場合その他これに準ずる場合

 

※外来でも「薬剤総合評価調整管理料」という名で同様の加算が算定可能のようです。

 

残薬、重複投与、不適切な長期投与などにメスを入れたい取り組みのようですが、言うは易く行うは難しで、現場レベルで対処する方法を見つけにくい取り組みの一つと感じています。

理由としては、下記のようなことがあるのかな~と思っています。

①行う業務負担に比べ、診療報酬が割に合わない

②薬を飲みたがる患者が多い

③急性期病院と地域のクリニックの連携を、患者の内服薬管理のレベルでとることが困難

 

①:薬剤師が入院患者の常用薬を把握し、患者の疾患を理解し、それに応じて2剤以上を医師と相談しながら減らす…という手間の作業の割に、患者1人あたり2500円しかもらえないというのはちょっとしょっぱすぎます。正しくやりたいのであれば、せめて倍の500点くらいに設定してもよいと思うのですが…。

②:患者側には、「薬を減らしたときに自分の体は大丈夫なの?」という心理が働くため、「薬を増やす」ことは受け入れられても、「減らす」ことはなかなか受け入れられないようです。医師としても、薬を増やすことよりも減らすことの方が頭を使うでしょうから、医療者・患者ともに減らす方向に気持ちが一致しません。

③:急性期病院に入院した時に頑張って内服薬を減らしても、地域のクリニックに戻った時に「あれ、○○さん今はこの薬飲んでないんですか?では元の薬も出しておきますね」と言われたら、せっかくの苦労が水の泡です。少しうがった見方をすれば、管理料の2500円は無駄な医療費にもなってしまいますね…。

 

私は外来レセプトに関わったことがないので分からないのですが、多剤服用対策の有効な方法の一つは、処方薬を審査機関でガンガン査定する(病院・薬局の持ち出しにする)ことなんじゃないかと思います。処方した薬のお金がもらえないのであれば、病院も薬を減らす方向に舵を切っていくでしょうし…。ただ、平和的でない解決策だとは思いますが。。

 

ポリファーマシーを理解するにあたっては、下記のリンクの記事を参照しました。

興味があれば合わせてお読みください。

yakuzaishiharowa.com