「医療の標準化」について

医療の質や医療安全を考える上で、重要な概念の一つとなるのが「業務の標準化」です。

「標準化」は、ある治療について、A部署・B部署・C部署のどこでやっても同じプロセス、同じ結果が出るように業務が設計されている、という考え方になります。機械産業では、部品を共通化することが「標準化」の方法の一つですが、病院の中では同じ手順・同じシステムで治療を進めることが「標準化」になります。

 

今の部署ではこのような仕事にもよくかかわるのですが、難しいなーと思うのが、特定の部署・部門が100点満点を取ろうとする姿勢を、必ずしも評価しずらい、ということにあります。(これは、事務の立場からの考えなのかもしれませんが…)

 

例えば、内視鏡の洗浄・感染管理の業務を例にとって考えてみます。

この領域は、消化器内視鏡以外にも様々な診療科で内視鏡が使用されていること(膀胱鏡、喉頭鏡、気管支鏡など…)、また内視鏡スコープは洗浄後に何度も再利用して使われ感染リスクが高い医療機器であることから、「標準化」の概念が非常に求められる分野です。

内視鏡の洗浄業務の詳細はここでは割愛しますが、「標準化」のベースラインを100点満点中の80点とすると、評価されるのは「全部署で80点の運用を確立すること」であり、「特定の部署で100点を出すこと」ではなくなるわけです。下記のように考えてみるとわかりやすいと思います。(合計点は同じですが、最高点と最低点に差があります)

 

【標準化されていない例】

A部署:100点

B部署:70点

C部署:70点

 

【標準化されている例】

A部署:80点

B部署:80点

C部署:80点

 

全部署で100点を目指そうとすると、業務や費用が非常に多くかかってしまうため、「まずは全部署で80点を取れるようにしましょう」と言わなければいけないません。しかし、専門的な知識を持った医療職の方は、自身の業務のレベルをより高い水準に持っていく努力をする(それ自体は素晴らしいことなのですが)あまり、他の分野がいつのまにか置いてけぼりになっている場面をよく見かけます。

 

このような場面に遭遇するときによく思うのが、「標準化はベースラインが低いところを基準に考えなくてはいけない」ということです。優等生を基準に考えるのではなく、(言い方は悪いですが)劣等生にいかに平均点を取ってもらうか、という観点から業務を設計することが必要です。

先程の内視鏡の洗浄・感染管理を例にとって考えてみると、「優等生」は専属の内視鏡技師を何人も抱え、1日に多くの内視鏡検査をこなし、ルーチン業務として洗浄業務を日々行っている内視鏡室になります。このような部署は、放っておいても業務がどんどん熟練していきます。

一方で「劣等生」はどこかというと、1週間のうちに5~6人程度しか内視鏡検査が行われず、洗浄業務も業務の合間に看護師・看護助手・事務が行っているような一般外来(婦人科、泌尿器科など)になります。

ですので、ここではあまり業務になれていない外来診療科でもできる業務手順をベースに、「標準化」を考えることが必要になってきます。

 

本当は、外来部門が内視鏡室側に教えを請いに、内視鏡室側は外来部門の総監督をするような関係性や体制を築ければよいのですが、うちの病院ではそれはまだ道半ば、といった感じです…。業務や費用を抑えつつ、そのような壁を取り払うためのコミュニケーションを促すことが、事務職の役割の一つなのかな~とも思っています。