業務委託と派遣の違い

医事課に異動して3ヶ月が経ちましたが、通常業務以外に、私の部署で働かれている派遣職員の方の窓口役の業務を担当させてもらっています。

私が以前医事課にいた時は「委託業務」の契約形態だったのですが、病院の方針などもあったのか現在は「派遣」という契約形態になっています。

業務委託と派遣ってどこが違うの?」というところからスタートしつつ、働く中で何となくの違いは理解できてきましたが、「契約する側にとって、業務委託と派遣の違いやメリット・デメリットがどこにあるのか?」という部分に関する情報が調べてもあまり出てこないことに気づきました。(個人として、「働くなら委託と派遣のどちらがいいか?」という記事は沢山あるんですが…)

ということで、今回は「業務委託と派遣の違い」をテーマに、1か月働く中で思ったことをまとめたいと思います。

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教科書的な業務委託と派遣の違い

こちらのサイトがわかりやすかったので、内容を参照させていただきつつまとめてみました。

www.saintmedia.co.jp

業務委託

企業と雇用関係を結ばず、企業と対等の立場で仕事の依頼を受ける雇用形態です。あらかじめ業務内容や費用、納期などを取り決めた上で業務を進めていきます。

ちなみに委託契約には「請負契約」と「委任契約」の2つの契約形態が存在するそうです。

  • 請負契約…業務の完成が目的(例:企業が外部ソフトウェア業者に社内システムを依頼)
  • 委任契約…業務の遂行自体が目的(例:ビル管理会社が1年間、清掃会社にビル清掃を依頼 )

病院でも様々な業務委託が存在するかと思いますが、例えば医事課の外来レセプトの点検をお願いしますとか、施設管理での清掃の業務をお願いしますとか、どちらかというと「委任契約」に近い内容のものが多いでしょうか。

事前に業務委託の範囲を決めたうえで仕事をお願いする形式になるので、

・業務に対する責任が委託業者に任されること。

・委託元(病院)が委託業者の業務を管理・指導することはできないこと。

が重要なポイントです。

派遣

派遣契約と、派遣会社と労働者が雇用契約を結び、派遣先企業で就業する雇用形態です。請負契約のように成果物の納品を目的とせず、業務の遂行自体を目的としています。

派遣契約では、派遣先企業と派遣社員の間に指揮命令権があるという形式になるので、

・業務に対する責任が派遣先企業に任されること。

・派遣元が派遣職員の業務を管理・指導することはできないこと。(責任は派遣先の病院にある)

が重要なポイントです。

業務委託と派遣の違いを比較すると…

ざっくりですが、以下のような比較表でまとめることができると思います。 

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以上を踏まえて、実際に一緒に働いている立場から「業務委託と派遣の違い」を考察します。

病院側の立場から感じる委託と派遣の違い

業務改善のしやすさ:派遣>委託

これは、派遣契約の大きなメリットだと思います。

業務委託契約の時は、現場の細かな運用を話す際も、委託業者の営業担当者を交えて打ち合わせを行い、契約書の範囲に含まれるのかどうかを逐一確認していました。

しかし、派遣契約であれば「派遣先企業と派遣社員の間に指揮命令権がある」という構図になるので、派遣先企業と派遣社員が密にコミュニケーションをとることで、業務改善がやりやすくなることは間違いありません。(もちろん、事前に伝えていた業務を大幅に逸脱することはルール違反ですが。)

管理の難しさ:派遣>>委託

現在私は、派遣スタッフにかかわる管理業務として

・勤怠管理

・休日希望の調整と月次・日次シフトの作成

・新しい派遣職員の教育進捗の管理

を行っています。これまでは、これらの業務は委託業者(現場のリーダースタッフ)が行ってくれていたのですが、派遣化に伴いこれらがすべて派遣元の業務となっています。

そして、これが約20名規模くらいで存在するので、物理的に結構時間をとられています。

「派遣化により指揮命令系統が分かりやすくなるため、現場でのコミュニケーションや改善が進みやすい」というメリットが強調されがちです。ただそれには、派遣先企業の職員が「派遣スタッフの方の管理」をこれまでと同水準かそれ以上にできる能力がある、ということが前提になります。

そうでないと、「ろくに管理もできない企業でなど働けない」と思われてしまい、現場で働く方のモチベーションが下がったり、場合によっては離職率の上昇につながってしまうかもしれません。

 

現時点での個人的な結論

「現場の管理者が優秀であれば派遣契約、そうでなければ委託契約の方が無難」

というのが、私の現時点での個人的な結論です。(ぶっちゃけた話なのでこんなこと職場では言えませんが。。)

あまり良くない言い方なのですが、契約元としては委託契約は「楽」な仕事のお願いだと思います。固定化された業務と、そこに関わるヒトの管理・監督を、これまでと同じ水準で外部にお願いできることで、組織としての業務負担は大幅に下がります。

 

先にも述べた通り、派遣契約の「業務内容を柔軟に調整できる」というメリットは、まずそこで働く人の管理をフォローを適切にできて初めて実現することだと思います。

しかしながら実際問題として、正職員レベルで現場の人の管理やフォローに苦戦している管理職が多い、という話は多く聞きます。そのような状況下で派遣契約のスタッフもフォローができるのかとなると、かなり疑問符がついてしまいます。

 

また、最近の雇用に関する重大なトピックとして同一労働同一賃金の問題があります。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

私も不勉強なので、今後どのようなことが求められているのかを理解していきたいと思いますが、現場の管理者にはこのようなことも理解し、気を配っていく必要があります。マネジメントの難易度が上がってくるご時世の中で、それに対応できる管理者が不足しているのであれば、組織全体としては委託契約の方が無難だと感じています。

 

一方で、現場の管理者が現場の改善が得意であったり、働くスタッフのモチベーションを高められるような方なのであれば、派遣契約の方がメリットは大きいのだろうなとも思います。業務委託は、業務の見直しに時間と、内容によってはコストがでてきますが、派遣契約であればそのような時間やコストは抑えることができます。

幸いにも、周りの派遣スタッフの方は皆さん協力的で、異動してきたばかりの私をいろいろと頼ってくださいます。私自身が勉強しながら、全員が働きやすく、働き甲斐を持てる職場に近づけるよう頑張っていきたいと思います。