中医協資料を読む:医療におけるICTの利活用

久々ですが、中医協資料のまとめです。テーマは「医療におけるICTの利活用」。

www.mhlw.go.jp

中医協で6月上旬に議論されている内容ですが、押さえておきたい内容も多いので、改めてまとめました。

遠隔医療について

一口に「遠隔医療」と言っても、

・医師対患者(DtoP)

・医師対医師(DtoD)

の二通りがある、という点が遠隔診療で押さえるべきポイントです。

f:id:espimas:20190811125548j:plain

「遠隔診療」 と言われると、どうしても医師対患者のオンライン診療を思い浮かべてしまいがちですが、医師対医師(またはその他の病院スタッフ)でのITの活用の動きも見逃せないところです。

診療報酬に関わる部分で、それぞれの現在の取り組みをチェックしていきたいと思います。

 医師の患者に対する利活用(D to P)

➀情報通信機器を用いた診察

一番有名なものですと、2018年度改定から算定が認められた「オンライン診療料」でしょう。

オンライン診療の基本的な考え方として、以下の7つのポイントを押さえていることがまず大前提です。

1)特定された疾患・患者であること

2)一定期間継続的に対面診療を行っており、受診間隔が長すぎないこと(※)

3)急変時に円滑に対面診療ができる体制があること

4)安全性や有効性のエビデンスが確認されていること

5)事前に治療計画を作成していること(※)

6)医師と患者の両者の合意があること

7)上記のような内容を含む一定のルールに沿った診療が行われていること

※初診の患者は対象外

 

そのうえで、現在の診療報酬では1月に1回、以下のような項目の算定が認められています。

  • オンライン診療料(70点)
  • オンライン医学管理料(100点)
  • 在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料(100点)
  • 精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料(100点)

またこれを機に、電話再診の要件も見直されています。

f:id:espimas:20190811155543j:plain

その他にも、「オンライン服薬指導」を可能にする法案が国会に提案されるなど、医師以外の職種でも情報通信機器を用いた診療行為が今後広まっていくことは間違いなさそうです。

f:id:espimas:20190811155853j:plain

②情報通信機器を用いた遠隔モニタリング

医師対患者のもう一つのICTの活用が、「患者情報の遠隔モニタリング」です。

これまでは体内植込式心臓ペースメーカー等を使用している患者に対して、医師が遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合に「心臓ペースメーカー指導管理料(遠隔モニタリング加算)」が認められていました。

これに加え、2018年度からは在宅酸素などに関わる指導管理についても、遠隔モニタリングの取り組みが評価されるようになっています。

f:id:espimas:20190811160235j:plain

医師間における利活用(D to D)

 こちらの領域では、大きく「画像診断」「病理診断」の二つの分野での取り組みが診療報酬で評価されてきています。

➀遠隔画像診断

放射線領域…遠隔画像診断を行った場合、保険医療機関間または十分な装置・機器等を用いて自宅等で読影及び診療を行った場合に、「画像診断管理加算」の算定が可能になっています。 

脳波領域…遠隔脳波診断を行った場合、脳波診断を担当した経験を有し、結果を文書により送信側の保険医療機関における当該患者の診療を担当した場合に「脳波検査判断料1」の算定が可能になっています。

②遠隔病理診断

病理領域の遠隔診療では、もともと診療報酬での評価の対象になるのが「標本(ガラススライド)を顕微鏡で観察すること」であり、デジタル病理画像のみによって実施することは認められていませんでした。

これに対して、2018年度の診療報酬改定では、「デジタル病理画像の観察及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた場合に、デジタル病理画像のみを用いて病理診断を行った場合も病理診断料を算定可能とする。」 と遠隔診療を評価する仕組みが作られるようになりました。

 

画像診断でも病理診断でも、全国の病院ごとに専門の読影医を雇用することが難しいのが現状です。このような遠隔診断の取り組みを通じて、画像診断や病理診断が地方隠さなく、適切に受けられる体制になってくるといいなと思います。

 DtoDの画像診断の世界では既にこんなアプリも…

先日、知り合いの方から教えていただいたのですが、モバイルアプリを使った院外からの画像診断のツールとして、すでに保険診療の適用が認められているものもあるようです。

www.allm.net

医療現場をMobile×Cloudで変える新しいコミュニケーションのかたち

救急現場において
「専門医師が院内にいない、でもすぐに指示が欲しい・・・」
そんなとき “Join” なら “モバイル×クラウド” でリアルタイムに医療関係者間のコミュニケーションをとることができます。

PACS(医療用画像管理システム)などと連携し、必要な医療情報を共有することで診療が可能になります。
医療現場を支える新しいコミュニケーションのかたち、それが “Join” です。(HPより抜粋)

医療機関の収入はほぼ診療報酬からということを考えると、ICTツールが医療機関に広がっていくためには、「保険適用」にどう絡ませていくか、も重要なポイントになりそうですね。

ちなみに、こちらの会社の社長さんの講演まとめがあるのですが、

「保険適用は、「今あるものに劣っていないので認めてください」というのは通りやすいんです。同じ枠の中に入れるだけなら、医療費も上がらないから」

というコメントは、なるほどなぁと思いました。

実際に、ICTを使ったアプリなど、現在の運用に劣っていない(それどころか、効率性やセキュリティーなどはむしろ高くなっている)ものもたくさんあると思いますので、次回の改定でどのようなICTツールが保険適用となっていくかも、併せて注目していきたいですね。

thefilament.jp