コロナウイルス患者に関わる診療報酬の事務連絡まとめ

新型コロナウイルスの報道が連日盛んにおこなわれています。

個人的には、基本的な体調管理として

・こまめな手洗い・うがいを徹底する

・風邪症状がある場合は外出や勤務を控える

 ・人ごみに近づかない

あたりをいつも通り行うことが大切と思っており、一市民として自分がうつらないようにいつも以上に体調管理を徹底しています。

一方で、病院に勤める事務職員として気になるのが「コロナウイルス患者(またはその疑い患者)が入院した際の診療報酬請求がどのようになるのか?」ということです。

今回は、2020年2月14日及び2月27日の厚生労働省保険局医療課より通達された事務連絡をもとに、この点についてまとめていきたいと思います。

※疑義解釈の内容については、読みやすいように一部中略をしつつ、「引用」の形式でまとめていますが、詳細は通達の原本をご確認ください。

※本記事は、疑義解釈の内容を病院関係者に共有するために個人的にまとめた記事です。通達の解釈や個々の患者への請求に関しては、都度管轄の行政機関にお問い合わせをいただき、正しい方法をご確認いただければと思います。

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DPCにおける「医療資源を最も投入した傷病名」 について

2020年3月1日から ICD10で使用するコードでコロナウイルス感染症が新たに登録され、DPC病名としても使用できるようです。(2月以前は今回の病名コードに近しいものをつけ、詳記を添付したうえでの請求が無難でしょうか。)

ちなみに、コロナウイルス感染症で選択されるICD10コードB34.2の診断群分類はその他の感染症(真菌を除く)(180030)は、DPCではなく出来高扱いとなります。

Q:2020年3月1日から 2019 年新型コロナウイルス急性呼吸器疾患について ICD10で使用するコードが「U07.1 2019-nCoV acute respiratory disease」とされるが、当該 ICD10 コードを「医療資源を最 も投入した病名」として選択すべき症例について、診断群分類区分はどのように決定するか。

A:2020年3月1日から3月 31 日までの期間に退院した当該症例については、ICD10コードB34.2(コロナウイルス感染症)を選択し、診断群分類はその他の感染症(真菌を除く)(180030)を用いる。

定数超過入院について

一般の入院患者に加えて、新型コロナウイルス感染症(もしくはその疑い)に係る患者を受け入れる医療機関に懸念されるのが定数超過入院です。つまり、例えば400床ある病院に410人の患者さんを一時的に入院させている状態を、診療報酬上でどのように取り扱うべきかということです。

この点についてですが、「やむを得ない事情での対応」のために減額措置の対応にはならず、通常の診療報酬の点数に基づき請求を行う、という解釈となっています。

(1)保険医療機関が、医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合の取扱いに係り、「災害等やむを得ない事情」の場合は、当該入院した月に限り減額の対象としないとされて いるところである。今般、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより超過入院となった保険医療機関にあっては、この規定にかかわらず、当面の間、同通知第1の2の減額措置は適用しないものとすること。

(2)(1)の場合においては、「厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する 費用の額の算定方法」(平成 30 年厚生労働省告示第 68 号)の第4項第一号に掲げるDPC対象の保険医療機関が医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合の取扱いによらず、当面の間、従前の通り診断群分類点数表に基づく算定を行うものとすること。

入院基本料の算定について

定数超過入院ともかかわりますが、医療機関が、新型コロナウイルス感染症患者等を医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合の入院基本料、特定入院料の算定についても回答が掲載されています。

原則は、実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定することになっています。また、かなりのレアケースと思われますが、会議室など病棟以外に入院をさせた場合についても想定がなされています。

  • 原則は、実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定する。
  • 会議室等病棟以外に入院の場合は、速やかに入院すべき病棟へ入院させることを原則とするが、必要とされる診療が行われている場合は、当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち、当該患者が入院すべき病棟の入院基本料を算定する。(この場合当該患者の状態に応じてどのような診療や看護が行われているか確認できるよう、具体的に診療録、看護記録等に記録する。)
  • 医療法上、本来入院できない病棟に入院(精神病棟に精神疾患ではない患者が入院した場 合など)または診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者が入院(回復期リハビリテーシ ョン病棟に施設基準の要件を満たさない患者が入院した場合など)した場合
  1. 入院基本料を算定する病棟の場合:入院した病棟の入院基本料を算定する(精神病棟に入院の場合は精神病棟入院基本料を算定。)※結核病棟については、結核病棟入院基本料の注3の規定に係らず、入院基本料を算定する。
  2. 特定入院料を算定する病棟の場合 医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置により、算定する入院基本料を判断すること(一般病床の回復期リハビリテーション病棟に入院の場合は 13 対1又は 15 対1の看護配置を求めていることから、地域一般入院基本料を算定。)。

施設基準の取扱いについて

定数超過入院と併せて、新型コロナウイルス感染症(もしくはその疑い)に係る患者を受け入れる医療機関に懸念されるのが、施設基準をこれまで通り満たせるようになるかです。

この点についてですが、「やむを得ない事情での対応」のために減額措置の対応にはならず、通常の診療報酬の点数に基づき請求を行う、という解釈となっています。

(1)新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等し、入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機関及び新型コロナウ イルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を派遣したことにより職員が 一時的に不足し入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機関については、当面、月平均夜勤時間数については、1割以上の一時的な変動があった場合においても、変更の届出を行わなくてもよいものとすること。

 (2)新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等した保険医療機関及び新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を派遣したことにより職員が一時的に不足した保険医療機関については、1日当たり勤務する看護師及び准看護師又は看護補助者(以下「看護要員」という。)の数、看護要員の数と入院患者の比率並びに看護師及び准看護師の数に対する看護師の比率については、当面、1割以上の一時的な変動があった場合においても、変更の届出を行わなくてもよいものとすること。

(3)上記と同様の場合、DPC対象病院について、「DPC制度への参加等の手続きにつ いて」(平成 30 年3月 26 日保医発 0326 第7号)の第1の4(2)②に規定する「DP C対象病院への参加基準を満たさなくなった場合」としての届出を行わなくてもよいも のとすること。

(4)(1)から(3)の届出を行わなくてもよいこととされた保険医療機関においては、 新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等 したこと又は新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を 派遣したことにより職員が一時的に不足したことを記録し、保管しておくこと。

また新興感染症での入院であるため、患者の状態にもよりますが一般病棟ではなく集中治療室に入室させるケースも多いことが予想されます。ICUなどの特定入院料を算定する病棟では、特定入院料の算定のために重症度の割合を毎月一定水準満たす必要がありますが、コロナウイルス(またはその疑い)の患者が多い場合、集中治療室での管理は必要だが重症度が全体として下がっている、というケースも考えられます。

そのような、状況の場合としての疑義解釈も紹介されており、結論としては「当該患者を除いて施設基準の要件を満たすか否か判断する。」となっています。

Q:保険医療機関において新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより、 特定入院料の届出を行っている病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院した場合に、特定入院料等に規定する施設基準の要件についてどのように考えればよいか。

A:当面の間、当該患者を除いて施設基準の要件を満たすか否か判断する。

初診時の選定療養費の徴収

「帰国者・接触者相談センター等に連絡し、その指示により受診した」という点が初診時の選定療養費の取り扱いのポイントになると思います。自己判断で受診した場合は、通常の風邪症状での受診と同じで選定療養費は徴収OK、ということになっています。

Q:新型コロナウイルスの感染が疑われる患者が「帰国者・接触者相談センター」等に連絡し、その指示等により、200 床以上の病院で、帰国者・接触者外来等を受診した場合、初診時の選定療養費の取扱いはどうなるか。

A:この場合、「緊急その他やむを得ない事情がある場合」に該当するため、初診時の選定療養費の徴収は認められない。

疑義解釈には載っていないが気になるポイント

ここからは、疑義解釈には載っていないが気になるポイントを二点考えていきます。あくまでも、診療報酬の原則論に基づく個人的な見解ですので、その点ご注意ください。

公費負担の範囲

コロナウイルス感染症法に基づく第2類の指定感染症になったことを受けて、入院中の医療費は公費負担となります。第2類の指定感染症には結核があり、感染症患者の受け入れを行う病院では結核患者(または疑い患者)を受け入れる機会もありますので、基本的にはその対応をベースに請求を考えるのが良いと思われます。

ちなみに、指定感染症の医療費助成では国籍要件を設けていないため、基本的には公費は外国人にも適用されます。(この辺りは医療機関と行政機関同士で都度確認です)

公費適用となるタイミング

陽性と診断がついた場合は保健所から公費適用となる通知が届きますので、病院はその通知に記載されている認定期間に基づき公費での請求を行うことができます。

認定期間は、基本的には入院日から遡ってくれると思われますが、保健所の判断等により開始日が「入院日(≒検査日)」ではなく「診断日」となり、入院日≠公費開始日とならない可能性もあるかもしれませんので、確認が必要です。

入院日≠公費開始日の場合は、公費開始日までの期間が患者負担となります。日本の健康保険を持っている場合はまだ良いですが、海外在住で日本の健康保険制度に加入していない場合は自費診療となり、高額になりますので、請求には十分な注意が必要です。

コロナウイルス疑いで入院したが、検査の結果陰性だった場合

これについては、

検査の結果が陽性→入院勧告となるため、公費負担

検査の結果が陰性→結果的には通常の肺炎での入院と同じため、入院日から自己負担

という扱いになります。

陰性の場合は、一般患者の入院と同じですので、 患者請求においては特別対応は不要です。

新型コロナウイルス患者への抗HIV薬の投与の扱い

ニュースでも報道された、コロナウイルス患者への抗HIV薬の投与について。

こちらについては、結局事務連絡は本日(2020年3月1日)時点では行われていません。

原則論で考えた場合、検査の結果が陽性の患者は公費負担になるため、請求は診療報酬制度に則り行われます。このため、現時点では適応外使用の抗HIV薬はレセプト請求では認められず、査定される可能性もあると言えます。

一方で、保険請求と自費請求を同時に行うことは混合診療に抵触するため、抗HIV薬だけ自費で対応することも制度上できません。

このように、非常に扱いが難しいため、結局は各患者ごとにレセプト請求時の個別対応、ということになるのではないかと思っています。コロナウイルスによる診断群分類の場合は出来高評価になりますので、薬剤も使用分の算定は一応可能になります。

感染症学会が、2020 年 2 月 26 日に「COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第 1 版 」を出しており、このガイドラインに合致した診療であることをレセプトの詳記として添付していく形になるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症|感染症トピックス|日本感染症学会

治療薬の治験がスタートしたというニュースもありましたが、保険適用は当分先であり、医療機関では「使用した患者分の薬剤をどう請求するか」について、頭を悩ますことになりそうです。

まとめ

  • 2020年3月1日より、コロナウイルスのDPCコードが整備される。なお、コード上は出来高請求となっている。
  • 定数超過入院や施設基準などは、「やむを得ない事情での対応」のために減額措置の対応にはならず、通常の診療報酬の点数に基づき請求を行う。(ただし、その状況の記録は必要)
  • 初診時選定療養費の徴収は、「帰国者・接触者相談センター等に連絡し、その指示により受診したかどうか」という点が、請求におけるポイントとなる。
  • 検査結果が陽性となったコロナウイルス患者には公費が適用されるが、適用開始日には注意が必要。陰性だった場合は通常通り自己負担での請求となる。
  • HIV薬の使用については、現段階で保険適用となっておらず、各医療機関での個別対応となる可能性が高い。

参照

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(令和2年2月14日事務連絡):https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599662.pdf

疑義解釈資料の送付について(その 20)(令和2年2月27日事務連絡):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000601275.pdf