2020年診療報酬改定を読む④:多焦点眼内レンズに係る選定療養の新設

2020年4月に行われる診療報酬改定に向けて、特に病院経営に深く関わる項目、社会的意義がある項目を注目すべきトピックをご紹介します。 今回のテーマは、「多焦点眼内レンズに係る選定療養の新設」です。 

多焦点眼内レンズとは?

白内障に対する水晶体再建術では、通常、単焦点眼内レンズが使用されるため、遠方または近方のみの焦点となり、眼鏡が必要となります。

これに対し、多焦点眼内レンズを使用した手術の場合、その多焦点機能により遠方及び近方の視力回復が可能となり、 それに伴い眼鏡装用率が軽減されます。つまり、遠近両方の視力回復を一度に行うことが出来るのが多焦点レンズの特徴、ということが出来るでしょう。

なお、今回の改定で対象となる多焦点眼内レンズは、

  • 眼鏡装用率の軽減効果を有するとして薬事承認されたもの
  • 先進医療において眼鏡装用率の軽減効果を有すると評価されたもの

の条件を満たしたものになっています。

改定の概要

多焦点眼内レンズは、現在は先進医療として位置づけられ、手術全体が保険適用外となっています。

これが今回の改定により、多焦点眼内レンズの手術自体は保険適用(眼内レンズ(その他のものに限る。)を使用した水晶体再建術を実施したものとみなす)となり、多焦点眼内レンズの材料代金のみが選定療養費として請求される仕組みに変更になります。

※詳細なイメージは下記の図も参照してください↓

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選定療養費の設定

患者から徴収する特別の料金設定については、

  • 眼鏡装用率の軽減効果を有する多焦点眼内レンズの費用から、医科点数表に規定する水晶体再建術において使用する眼内レンズ(その他のものに限 る。)の費用を控除した額
  • 本療養に必要な検査に係る費用(医科点数表に規定する基本点数をもとに計算される額を標準とする。) を合算したもの

を標準として、社会的にみて妥当適切な範囲の額とするとされています。(途中で料金の変更がある場合は、地方厚生(市)局長にその都度報告が必要になります。)

保険適用となっている水晶体再建術には、眼内レンズの代金が含まれた手術の点数が設定されていますので、そこにかかっている眼内レンズの代金は差し引いたうえで、選定療養費としての多焦点眼内レンズの材料代金を設定してください、という意味ですね。

 

その他の注意事項

多焦点眼内レンズに関わる選定療養をスタートするにあたっての注意事項です。

特に多焦点眼内レンズに関する料金の掲示や同意書の取得等は、監査等で厳しくみられる可能性が高いため、どの病院も運用開始には注意が必要ですね。

  • 本療養のメリット、デメリット及び費用に関して明確かつ懇切に説明を行い、患者の自由な選択に基づき、文書によりその同意を得る。
  • 本制度趣旨及び特別の料金について院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすく掲示する。
  • 患者から特別の料金を徴収した保険医療機関は、毎年の定例報告の際に、その実施状況について、地方厚生(支)局長に報告する。
  • 関係学会から示されている指針に基づき、本療養を適切に実施する。

まとめ

  • 多焦点眼内レンズを使用した手術の場合、遠近両方の視力回復を一度に行うことが出来るのが特徴である。
  • 多焦点眼内レンズは、現在は先進医療として位置づけられているが、今回の改定により、多焦点眼内レンズの手術自体は保険適用となり、多焦点眼内レンズの材料代金のみが選定療養費として請求される仕組みに変更になる。
  • 多焦点眼内レンズに関わる選定療養をスタートするにあたり、多焦点眼内レンズに関する料金の掲示や同意書の取得が必要になる。

参考

2020年3月5日公開 令和2年度診療報酬改定の概要(技術的事項)

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603960.pdf

※今回の改定のパワポは分かりやすいです!厚労省の資料が苦手だな~という方も、ぜひ一度目を通してみてください!