Healthcare Venture KNOT 2025に参加してきました

先週、医療者とヘルスケアスタートアップを結ぶイベントの「Healthcare Venture KNOT 2025」に参加してきました。 

お目当ては三つのトークセッション。自分に向けた学びのメモとして記事に書いておきます。

*セッションのテーマや出演者はこちらから

https://peatix.com/event/4575261

 

トークセッション① 「医師起業家が切り拓くヘルスケアの未来 〜三世代が語る挑戦と未来ビジョン〜」

2000年代、2010年代、そして2020年代の三世代の医師起業家によるトークセッション。

各スピーカーの方の話で刺さった内容を箇条書きで書いていきます。

ハイさん

・自分は現場大好き人間

・「なぜ自分の病院は赤字なのか?」と副院長に問うたときに、「分からない」と言われた。それであれば、現場を良くするために外に出ようという決断で起業した

・当時は、医局に入って医師としての研鑽を積むというルートしかなく、ある意味では楽だった。今は選択肢が多くあるが故に、楽しさと厳しさがある。選ぶことは苦しい

・「ハイ先生は医師としては価値あるけど、コンサルとしては価値ない」という一言に燃えた

組織は最後は人。感謝、謝罪、お願いをして人を動かし組織を動かす。やっているのは小学校の道徳で習ったこと。

・ビジネスをやるのであれば「Know how」ではなく「Know who」。何をするかではなく誰とやるかが大切だと思っている

・ビジネスと医療の両立について、実はあまり深く考えたことない。価値が出せればお金はもらえるというスタンスでやってきた。

・お金儲けと医療の倫理観を二項対立で考えるものではない

 

物部さん

・2010年前半で研修医をやっていた時代は、ちょうどスマホが出始めて、感度の高い層が抜けていけた時代。

・現場の課題がいくらでも落ちていた、DXがし放題な時代で、そこで抜け出せたことは良かった。

・会社経営では、チームづくりが一番大変。リクルーティングが最大の壁

・チームづくりは、仲の良い人と長くやるのを大事にする。LTV重視

・新規メンバーのリクルーティングは見極め〜組織フィットまで半年かかるので、コスパ悪いという見方もできる

・医療とビジネスについて、利益が出てなければ「儲かっていない」という認識

・医療は儲ける方向が難しいので、株価を上げて資金調達なゲームになってしまう。お金が儲かる仕組みが出ることで、株主ではなく顧客を向いたサービスができる

 

中原先生

・現場にそもそも入ったこともない。

・学生企業自体に、国家試験と資金調達が同時にきているみたいなことがあってきつかった

・「当たり前品質」のものを出すことの難しさ

・株式会社は株主のためのもの、そこに対しての貢献をきちんとやることは意識している。

・プライシングは自分で決めないと、結果的に売上や市場がシュリンクしてしまう

・値下げに対しては、「良いものが作れなくなってしまうので」という理由で断ることも多い。そこでの失注はやむなし

 

三者三様なトークセッションで、自身がヘルスケア関連の企業にいることもあって「医療とビジネス」の両立についてはなるほどなーと聞いていました。

その中でも、医師起業家のかなり先駆け的な存在で、病院経営の現場にも入り続けてきたハイ先生の話は、一つ一つに重みがあり、刺さるフレーズが満載でした。ご本人、今はあまりこういった類のセミナーを受ける機会は少ないそうで、話を聞けたのはとてもラッキーでした!

 

トークセッション② 「ヘルスケアビジネス最前線 〜現場と市場をつなぎ価値創出へ〜」

続いては、「ヘルスケアのリアルな課題を、どう社会に広げ、持続的な価値へと変えていくのか」というテーマで、スタートアップ・事業会社・投資家・行政のそれぞれの立場からのトークセッション。

 

アイリス 沖山先生(スタートアップ)

・10年前からAIの研究をしていた

2035年は間に合うと思っている。

今までの医師免許は知識を担保するものだったが、現代はそれがAIでカバーされる

何を医師免許で担保すべきか?技能の部分など、もっと考えた方が良い

 

エレコム 葉田先生(事業会社)

エレコムグループの後継者の医師の方。

・支出を抑えるだけだと限界がある。収入を増やす方向にいかないといけない。

・正直、医療系のスタートアップは全然盛り上がってない。医療系スタートアップには、頭いい、医師の気持ちわかる、スタートアップの根性あるの3つが揃うのが大事

・単純にマーケットがないのが問題だと思っている。エレコムはインドのスタートアップに投資したが、市場が大きい。病院じゃなくて医師と契約する

・インドのGEの社長は70個のAI医療機器がある(日本は70個、アメリカは1500個)

・医療ビジネスは通常よりも相当難しい。医師などの医療職はドメインには思いがあるからやるけど、自分がVCだったら医療ビジネスには投資しない

・ビジネスとしての医師起業家が十分バリューを出せていない

オムロンはすごい。血圧計だけで800億?、世界市場で8割。医師の勉強会からマーケティングで売ってており、尊敬すべ事業会社。

・ハードは世界を超えるが、ソフトやSaasは日本に限る

 

ジャフコ 沼田さん(投資家)

・AIが病院のワークフローを変えていくと思っている。そこがひとつのテーマ

・ヘルスケアの投資をする時に見るのは、「費用削減」だけでなく「売上が上がる」という実測値がわかるようになること。費用削減だけだとお財布の紐が開かない

ベンチャーキャピタルで見るのは6−7年くらいのスパン

 

医師 松本先生(行政)

・AIサービスで考えるのは、オンライン診療

・オンライン診療でとっている情報とそこからの処理はAIで代替できる

・逆に、リアルの価値はきちんと残る

・人口構造から見て、わかる未来から考えていくことが大事。

・医療費の削減は病院で使う医療費が本丸。ただ、病院をひとつ潰すのは大変。

・一方で、そこに入り込むことが医療の未来を考えると大切、、

・今のままが良いと無意識に思っている人がいると思うが、失敗しながら進める人材が貴重

 

個人的には、エレコムの葉田先生の話に特に興味津々でした。(というか、エレコムが医療ドメインに深く参入していることを恥ずかしながら知りませんでした。。)

自らはエレコムの事業責任者としても動きつつ、世界のヘルスケアビジネスや日本の現在地点をフラットに見られているお話はとても面白かったです!

 

トークセッション③ 「病院組織をアップデートする 〜HR戦略の新しいあり方の探求〜」

最後が、病院経営に突きつけられる組織課題に対し、変革の時代に求められる「人と組織のあり方」とは何かを考えるセッション。

登壇者のお三方ともX上でもよくお世話になっており、個人的には当日一番のメインイベントでした。

 

矢野先生

・組織のパーパスは理事長で決める形で作った(理事長+役員とコンサルで決定)

医局やオフィスをフリーアドレスにし、役職・職種間の物理的な壁をなくしている

・リフレッシュ休暇は99.9%。これは理事長管理で徹底させた

・理事長の立場からすると、組織状態を把握する上で色々なところで本音を言ってくれるメンバーを作る。ヤンチャな発言をするメンバーを何人持っておくかが重要

・1職員レベルの声を経営にどのように活かしていくため、洛和会はアンケートを取って、施策については◯△✖️で回答する。

・また、理事長が企画するランチ会をしており、そこで出た意見についても回答を出す。

・異業種からの転職組も多い。他業種からの受け入れの土壌を作るのが大切

・看護師などの出戻りが多い。外に出て初めて、良かったことがわかる

・カルチャーを伝えるためには気合いが必要。笑顔になることを大切に

 

加納さん

・トップがあるべき組織像を見出して、そこから法務・広報・人事などが作っていく

・「チームの質が医療の質」が理事長が意識させていること

・コミュニケーションをいかに発生させるかにこだわっている、1on1の実施状況をリスト化してチェックするなど、コミュニケーションの実施度合いも見られるポイント

・「対話重視」だと優しい世界に見えるが、それだけではなくて締めるところが締めるという管理の強度が重要

・各組織において、指示を待つのではなく、トップが話していることを自分なりに解釈して、自分で問いや方針を立てる。問いを立てて相手に話すことは重要だと思う

・人事の立場からすると、医療現場に立っているマネージャーと対話して、そこを信じる、現場に落とすことをとにかく意識している。一方で聞きすぎることもよくないので、そのバランスが大切

病院で働くのは面白い!と思ってもらいたい。心が動く体験がたくさんあるところ

 

荒木さん

・医療を通じたまちづくりをしたい、という部分からメディヴァに就職した

・これからは中小病院がキーになると思っており、さまざまなご縁から現職に就職。

・医師中心の医療モデルでは限界がある。治らないということを前提とした上で、病院のモデルを考えるアップデートが必要。「Cure」から「Care」への転換で、「ケアに使う時間」への投資が大切

・30年ぶりくらいのMVVの見直しは、荒木さん+4人(目線の合うメンバー、役職は問わない)のメンバーで言葉を作った。そことコピーライターを入れ、役員クラスからの承認を得た。

・自院の運営において、医師の権威勾配をなくすのが大切。QOLを目指す中で、医師が3歩くらい下がってエンパワーメントしてもらう取り組みをしている

・医師含めたボードメンバーからの発信の目線が揃っているのは良いと思う

・医療職が悩むことの仮説として、医療者は上司が二人いる状態にあることが考えられる。例えば看護師であれば、組織のマネージャー(看護師長)と、臨床指示のマネージャー(医師)がいて、そこでの不一致などから悩みが生まれやすい

・その点、事務は医師の指示をもらわないので、よりフラットに関われる土壌をもてるのでは

・経営では施設基準で人員配置が厳密に求められるが、それだけではなく、診療報酬のゲームに入っていかない人員を持って、そこを価値として出すことが大事なのでは

 

理事長・事務長・人事と三つの立場からのお話でしたが、組織づくりの「こだわり」という部分で通じ合っていた様な印象も受けました。

人事の施策というと、大きな方針づくりの部分こそ華やかに見えますが、実際には矢野先生の話にありましたが「気合い」がその方針の浸透やカルチャーづくりが重要であり、他の二人の話を聞いても泥臭いプロセスなのだなと感じます。

病院という、リモートがないほぼ100%現場の組織ならではの難しさやリアルを感じさせていただいたセッションでした!

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とりあえず、私のPCにメモした内容をほぼそのまま書いた内容になりましたが、たまには日常の仕事に離れ、こういった色々な角度からのお話を聞くことは大変勉強になるなーと、強く感じた一日でした!

自分でも、このブログで新しいトピックの発信に挑戦しつつ、こうしたインプットの機会も定期的に持っていきたいなと思います。