先月、医療機関の情シス担当の求人内容のポストをきっかけに、このポジションに対していくらの給与水準が妥当なのか?という議論がXで出ていたのを見かけました。
イメージとしてはこんな感じの業務内容です。
○概要
法人全体のIT基盤の運用・保守を担当
○主な業務内容(5年程度の業務経験が前提)
・各施設のPC、ネットワーク、サーバー、プリンタ等の保守・設定・ネットワーク構成の設計・改善(LAN/VPN/Wi-Fi等)
・Microsoft/Google Workspace等のグループウェア管理・運用
・ホームページの保守・更新・ドメイン/SSL管理
・セキュリティ対策、バックアップ体制の整備
・外部ベンダー・通信事業者との折衝・契約管理
・IT機器やソフトウェアの導入企画、標準化推進
○給与 想定年収
550万~700万円(医療機関・介護施設での経験者/管理職・リーダー経験者尚可)
こちらに対しての反響として、主には下記のような内容が目立ちました。
・人員体制や及第点のレベルによるが、求めるスキルがオールマイティーすぎる
・一般企業だったら1000万円以上の給与提示になるポジションではないか
・医療機関事務職としては立派な給与だが、この要件を満たせる方なら別の業界でより高い年収を得られるというのが難しいところ
この辺りの前提をもとに、医療機関の情シス担当にいくら払うべきか?という議論についてもう少しかみ砕いて考えていきたいと思います。
医療機関の情報システム担当は何をしているのか?
議論の前段としてですが、下記の点を押さえる必要があります。
・どの程度の業務範囲を期待するのか?
・院内情シスはそもそも事務職の括りなのか?
・事務職扱いでない場合に、独自給与テーブルは設定されているのか?
こちらに関して、現時点での対応としては、
・求める業務範囲は、上述の求人内容(+電子カルテ運用に関するもの)
・扱いは事務職としての括り方
・独自給与テーブルは無く、事務職に準じた給与
という状態が一般的ではないでしょうか。
正直なところ、「医療機関勤務の情シス(エンジニア)」は個人によってだいぶ差があり、ひとくくりにして方向付けを出来ないという部分はありそうです。
「医療機関勤務のエンジニア」に求められる能力のピンキリすぎて、「いくら払うべきか」を語るのは難しい
— ナムディ(NSТ) (@sakotty92) 2025年12月8日
同じ情報室でも、ユーザーマスタ管理くらいしかしてない人から、CIOクラスまでいるのが院内SE
前者なら事務職員の給与体系で十分だし、後者はべき論で語るならそもそも病院では雇えない金額笑 https://t.co/fdaLKM1nOW
ちなみに、採用に関してもスキルチェックの難しさの話が出ていました。
ポートフォリオや実技試験のような形でのチェック体制なども考えていく必要があるかもしれません。
エンジニア系で言うポートフォリオのような感じで、なんらかの形で一定のスキルチェックが出来れば、地雷を雇わなくてすむんですがね。
— なこあ (@__nakoa__) 2025年12月21日
役職がない人が無能とイコールじゃないのはわかっていますが、役職がない40代以降に無能の比率が多いのも面接で体感しています。 https://t.co/7lvixrNAYe
医療機関の情シス担当にいくら払うべきか?について
個人的には、このポストの方向性が一番しっくりきました。
情報システムやDXには攻めと守りがあると思ってて、
— 小迫 正実 (こさこ まさみ) (@masamikosako) 2025年12月7日
それは集客や稼働率につながる攻めの人材と、職員全体の効率性やセキュリティを向上させる人材です。
それぞれ専門性が異なるがゆえ、雇用にこだわらずパートナー契約を結ぶなど今までと違う形で事業運営するなのかなぁ〜と思います。 https://t.co/WG5XFfNzDR
「攻めの人材」に関しては病院の事務企画職を中心に、経営方針に沿ったIT化の提案や運用調整を行いつつ、
「守りの人材」に関しては、1病院単体での専門家雇用が難しいと思うので、院内の給与テーブルを別で作るよりもパートナー契約で専門スキルを外注させながら品質を担保していくことを中心に行う。
もちろん、医療機関の経営難もあってどこまで外注コストに費用をかけられるか?という点もありますが、職種別の給与レンジがガッチリ存在する中で新たな専門職&給与テーブルを設定する難しさもあると思います。
「既存社員の給与テーブルに合わせて募集をしてもスキルの高いエンジニアは集まらない」という前提のもと、「攻め」と「守り」で役割を決めつつ動かしていくのが現実路線な気がしています。
別視点ですが、複数病院の掛け持ち、といったアイデアもありそうです。
1つの病院だけで雇用するのはキツい
— ぱろすけ (@parosuke1976) 2025年12月7日
複数の病院で複数のSEさんをシェアするのが最適解かなぁ
特に、赤字中小病院は https://t.co/utIrGRej2W
あとは、今後の医療業界の発展を願いあえて厳しい話も入れておきたく、、
このポストに書いてあることは、考えさせられました。
医療SEの年収の話
— おー (@ogi_mse) 2025年12月8日
これぐらいの年収しか提示できませんは別に結構だが、これぐらいの年収しか出せない分際でDXが進まないのは専門人材がいないからなどとは業界として言って欲しくないね
金出す気がないのに資本社会の人材に縋るなよ
ただただみっともない
ちなみに、DX人材の確保は、それはそれで難易度高いですが。。以下、参考になるなと思ったポストです。
メーカーで5年DXを推進して思うこと
— ノムオ (@nomu_chem) 2025年12月21日
・DXは「プロセス」であって、それ自体では何ら価値を生み出さない
・意思決定は上位者が行うので、DX人材は鬼のプレゼン力が必要
・udemyだけではDX人材を育成できない
・現場の課題とDXに纏わる技術を結びつける発想力・翻訳力が鍵
・DXに纏わる外注は難しい…
番外編:電子カルテ更新にまつわる話
今回の話と少しそれますが、先日電子カルテ更新に関するポストをしたところ、思わぬ反響が。
医療機関の情シス担当の役割を考えるうえで参考になった内容を、箇条書きで書いておこうと思います。
・病院に限らず日本全体でプロジェクトマネージャーが不足してることは、もっと深刻に捉えられるべき
・電カルのプロジェクトリーダーが極めて重要で、なおかつ相応しい人材がそれに当たるケースはレア
・電子カルテ更新を解像度高く語れる人材は一定数いるが、その通りに実際に動ける人は少数で、大規模病院クラスになるとさらに貴重。一方で、病院側がそういう人材に相応の給与を用意して迎え入れる価値観を持っていないので、電子カルテに限らずあちこちで炎上する。
・電カルは強権発動できる人が旗振らないと失敗する。医療現場の要望やこれまでの業務の流れを変更する対応するにあたり、現場を「ナタの切れ味」で仕切る事務方がいないと厳しい
・電子カルテとレセコンは各病棟、診療科から最終的にレセプト電算処理システム(と会計窓口)まで直結して瑕疵なく稼働しないと意味がない。これを過不足なくやれる人材が必要だが、病院内にそんな人間はごく少数。
・医療現場のITのプロジェクトマネージャーには、ほんとに泥臭いヒアリングや、「運用でカバーしてる」謎の儀式とかまで把握してないといけない
・現場ワーキングへの落とし込み・リハーサル調整がどれだけ「みんな言う事聞かない・協力しないか」がわかってる
・大規模病院のシステム更新は魔境
まとめ
Xでの議論も踏まえつつ「医療機関の情シス担当にいくら払うべきか?」という議論について書いてきましたが、改めてまとめです。
-
医療機関の情シスの想定年収は、「事務職」の給与テーブルに 相当することも多い。
-
この結果、求められるスキルに対して一般市場より給与水準が低く、人材確保の壁となっている。
-
IT機能を「攻め(企画・DX)」と「守り(保守・運用)」に分け、守りは外注や病院間シェアを活用する戦略が現実的ではないか
一方で、今後の病院経営を考えると、DXをゴリゴリ推進できる人材が活躍できる業界にしていくのは不可欠。給与テーブルの問題や、解決すべき問題を絞って迎え入れていくなど、医療機関側でも情報システム部門の人材雇用の在り方は今後の病院運営の重要事項になっていくでしょう。