今の部署に異動してからほぼ丸1年になりました。
「医療安全・医療の質向上に事務として貢献する」というテーマに向き合い、結構葛藤した一年でした。
前の部署が患者さんと話したり、診療費を請求したり、診療科の会議の事務局をしたり、いわゆる「現場で汗をかく」「病院事務っぽい」仕事をしていたため、そこから管理部門へのシフトチェンジによるギャップもありました。
私が異動したときは、先人たちの頑張りで、既に医療現場における安全・質向上のための運用はかなり固まってきていました。その中で、事務としてどのように病院に貢献すればよいのか、を働きながら探していましたが、最近の仕事を通じて、事務としてやるべき仕事の軸が何となくですが見えつつあります。
それは、
①医療現場のサポート役になること
②経営に貢献すること
を両立させることです。
…超当たり前じゃん!、ということなのですが、少し粒だてて説明します。
①「医療現場のサポート役になること」とは?
- 医療現場の仕事を効率化すること(業務改善)
- 医療現場の日常業務への理解を高めること(職員教育)
- 医療現場に不要な業務を増やさないこと(業務整理?)
- 医療現場の相談相手になること(窓口役)
恥ずかしながら、「事務職が医療現場のサポート役になること」の意味として、1と4のところしか理解できていなかったのですが、この一年で2と3の役割もとても重要なのだと、あらためて認識しました。
2でいえば、「なぜこの業務や記録が必要なのか?」を医療現場に伝えることで、医療者の業務や記録への意識が上がり、結果的により良い医療を提供するきっかけにすることができます。また現場での仕事への納得感も生まれ、仕事への満足度が上がるのかもしれません。
3は院内の情報を集めやすく、中立な立場でものを言いやすい事務ならではの仕事だと感じました。例えば看護師に非現実的な量・レベルの記録業務を求めてくる医師との間に立って真にやるべきことを整理する仕事(いまやっている最中ですが…)は、医師と看護師の押し問答になることを防ぎますし、医療者を医療に集中させる時間を少しでも作ることにつながっていると感じます。
②「経営に貢献すること」とは?
- 収入を増やすこと
- 費用を減らすこと
- 無駄遣いをさせないこと
これまで私が「経営への貢献」として思っていたのは1と2ばかりだったのですが、実は3も非常に重要であり、かつそれを購買部門・施設部門以外で中立的に見る立場が病院にはほとんどいない、ということに気づきました。これも、「医療安全・医療の質」という、現場の運用を深く知る必要がある部署に関わることならではの発見でした。
例に出すとなんか後ろめたいのであえて隠しますが、医療者の要求に流されるままの機器の購入、施設の修繕は、最終的には統一感のない器材配置や施設利用につながり、組織としてのムリ・ムダが大きくなるように感じます。
こういったハード面の要求は上限がないので判断が難しい分野だと感じますが、購買部門・施設部門と一緒に、「なぜここにお金を使う必要があるのか?」ということを考えられる経験はとても貴重でした。
そして何より大切なのは、「①と②を両立させること」です。
例えば①だけを達成するのは簡単です。医療者のいうことを聞いて仕事をしていれば、それは「サポート」になりえます。しかしその事務職には「管理」の概念はありません。語弊はありますが、それであれば、各診療科、各外来、各病棟で「医療秘書」を雇えばいいことになります。
逆に②だけを達成するのも簡単のように思います。収入増・費用減のアイデアを出すこと自体は簡単です。しかし、どのようにして医療者に納得感を持たせつつ、収入増・費用減を達成していくことには大きな労力を使うはずです。
「収入が上がればいい」というスタンスでは医療者との会話は成り立ちませんし、「費用をとにかく削るべし」では、どこかにしわ寄せがきて、患者の安全が脅かされる可能性があります。結局は、医療のことをよく知ったうえでの提案がとても大切になる分野です。
ということを踏まえ、①で医療者の仕事や気持ちを十分理解したうえで、②の経営的な側面(ヒト、モノ、カネを大切にする)を踏まえた意思決定をすること(またその意思決定の補助をすること)が病院事務に求められる姿なのだと、最近の医療者とのやり取りを通じて思う日々です。
まだまだ仕事では躓くことばかりですが、一方で1年かけて自分の仕事の意義をようやく見出すことができるようになってきたことも嬉しく思っています。
帰りの電車で練っていた考えをまとめ終わり、来週も頑張ろう!と思った、金曜日の夜です。