メディカルニュースまとめ:副作用漏れなく報告を 厚労省、医療機関向け手引(日本経済新聞 2017/8/11)

会社のお昼休みに、医療系のニュースまとめを社内メールで事務で興味のある職員に転送するというボランティア?業務をしているのですが、それを見た先輩から、「週に3本くらい、気になったニュースをまとめてブログに書いてみたらいいんじゃない?」とアドバイスをもらいました。

週に3本は面倒くさくてなりそうなので、時間のある時の1日1本を目標にやってみようと思い、本日はその第1回です。

取り上げるニュースがこちら↓

 

副作用漏れなく報告を 厚労省医療機関向け手引
日本経済新聞 電子版 2017/8/11
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09H53_R10C17A8CR8000/

 

○ニュースの概要

 薬の副作用の報告は医薬品医療機器法に基づき、下記の2つのルートで報告する必要がある。

(1)製薬会社など企業が医療機関などから情報収集し医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告する

(2)医師など医療関係者がPMDAに直接報告する

副作用の報告数を増やし、医薬品の適正使用のための対策の検討に役立てられているが、この報告のうち、厚生労働省医療機関からの薬の副作用報告が実際よりも少ないとみて、報告を促す手引を作成した。手引きでは、副作用が疑われる事例を漏れなく一元的に管理する部署や責任者の配置を求め、医療安全管理室や薬剤部などがその役目を担うのが望ましいとしている。

 

○コメント

実は、「薬の副作用報告の適正化」は最近関わっている仕事と重なる部分があり、日経新聞を読んでいてこの記事を見つけた時、ああ自分の仕事も少しは社会の役に立っているんだなーと嬉しくなり、この記事を選びました笑

今関わっている仕事は、院外への薬の副作用報告ではなく、院内でどのように薬の副作用を収集し、カルテに正確な記載として残すか、という内容です。

外部機関への情報提供ももちろん大切なのですが、今日報告した薬が明日から改善されるわけではないので、院内的に「○○さんは××の薬で副作用がある」という情報を残すことはとっても大切です。重篤な副作用が同じ病院で繰り返された場合は、病院の責任が問われる可能性もあります。

 

ただし、適切な報告の収集に向け、色々とクリアすべき障壁があります。

①そもそも「副作用」の定義が曖昧なこと

②副作用報告を院内で収集する仕組みが知られていないこと

③副作用報告を医師にあげてもらうのが難しいこと

④副作用をレビューして原因を特定する体制がないこと

 

①は、「アレルギーと副作用の違いって何なの?」というところから、医師・看護師・薬剤師と話し合い、一般人でも見分けられる分かりやすい定義を院内的に決める必要があります。

②は周知の問題ですが、日常的に使わないツールというのは驚くほど知られることが難しく、社内メールや会議でのアナウンスを続けるしかなさそうです。

③が一番の課題で、「医師に適切な報告をさせること」はどの病院でも難しいのではないかと思います。しかし副作用を一番近くで見届けているのは注射・処方をオーダーする医師であり、ここに介入しないと正しいデータはいつまでたっても上がってきません。厚労省が本気でデータを集めたいのであれば、病院が報告を出すインセンティブの働く仕組みを設けてほしいところです。

④は、記事の中にもありましたが副作用が疑われる情報を一元管理する部署を決めることが必要になります。「医療安全管理室や薬剤部などがその役目を担うのが望ましい」とありましたが、忙しい病院で新しく副作用報告のレビューを手を挙げて受け持ってくれる部署などなかなかなく、交渉が大変です。

 

…とまあ、厚労省が手引きなんか作っても、それを受け止める現場の病院は大変なんだぞ!っていう愚痴みたいになってしまいました。

ただ日本の医療を考える上で非常に重要な課題なので、まずはうちの病院がよい仕組みを構築していかなければ!、と強く思わされたニュースでした。