今年は4月から医事課に異動して、とにかく部署の仕事で「ヒト」に関わることの多い一年でした。
4月から医事課に戻って、改めて思うのは「人が命」の部署なんだなと。対患者さんでも対スタッフでも、円滑なコミュニケーション無しでは何も始まらない。
— 病院で働く事務職員 (@medical_admini) 2019年12月27日
まずは自分の係から、コミュニケーションを取りやすい雰囲気や仕組みを作っていくのが2020年の課題!
私自身が中堅の世代となり、周りのサポートや管理を求められるようになったことで、若手時代に見ていた医事課とは、また違う医事課像が見えた一年でもありました。
そんな中で改めて思うのが、Twitterでも述べた通り「医事課は『人が命』の部署」なんだということ。
いや、全世界のどの会社のどこの部署も人が命なんですが、その中でも病院の医事課はやっぱり人が命です。一方で、全国的にどの病院の医事課も人不足や高い離職率に悩まされていると聞きます。これは一体なぜなのか?
今回は、医事課の運営を難しくする人材問題について考えたいと思います。
医事課の運営を難しくしている三つの人材問題
個人的に考える医事課の運営を難しくしている人材問題は、以下の三つです。
➀大人数で人材流動性の高い集団であること
②患者対応という接遇業務の難しさ
③様々な雇用体系や働き方の存在
それぞれ、その現状を説明していきたいと思います。
大人数で人材流動性の高い集団であること
まず挙げられるのが、部署としての「人数の多さ」「人材流動性の高さ」によるマネジメントの難しさです。
医事課では係長クラスでも一人で20~30名規模のチームを率いることが求められることが多くあります。各係を束ねる医事課長だと、その下につくスタッフが100人を超えることも珍しくないでしょう。
当然、人数が多いとひとりひとりのマネジメントや業務の把握に割ける時間が少なくなります。管理職自身もプレイイングマネジャーとして現場を回すことに力を割く傍らで、自分の部下がどのような状況で、どのようなやりがいや不満を持って働いているのかをリアルタイムに把握していくことはなかなか難しいです。
また人数が多いことで、離職する人数も年間で一定数存在しますし、若手から中堅の世代が多いことから他部署への異動も多く発生します。「大人数で人材流動性の高い集団」というのが医事課という組織の特徴であり、マネジメントを難しくする大きな原因の一つといえるでしょう。
患者対応という「対人の接遇業務」がメインの部署であること
主な仕事内容が、患者対応という「対人の接遇業務」がメインの部署であることも、医事課の仕事を難しくしています。
ここでは、大きく「スタッフ⇔患者」「スタッフ⇔スタッフ」の切り口から考察します。
スタッフ⇔患者
そもそもの話なのですが、医療事務の「接遇」ってサービス業の中でもハードルが高いと日々感じています。
・相手(患者さん)が病気であり、体力が落ちている
・病院自体の仕組みが複雑
・長い待ち時間
の中で、イライラしたり不安を募らせている患者さんやご家族を相手に手続きや請求についての話をするのは大変なことです。
もちろん、それをやりがいにしてくださっているスタッフは多く、その方々に私も日々助けられて仕事をしています。ただし、慣れないとストレスを貯めやすい職場環境であり、対人の接遇業務の中でも特にハードルの高い仕事であることを現場の管理職は常に気に留め、ケアしていく必要があります。
スタッフ⇔スタッフ
管理部門の場合、部署としての仕事でも実質的には担当者が決まり、個々人のリズムやペースに合わせて仕事をすることができます。最悪、ミスをしても「自分のケツくらい自分で拭きますよ!」と腹をくくることもできます。(ダメですけど…)
一方で、医事課の患者対応は個人の仕事ではなく、部署全体で対応する必要のある業務です。
例えば外来の流れを想定すると、保険確認→受付→会計と3つの場所を通る際に、それぞれの部門で異なるスタッフが応対することがほとんどです。また、土日・夜間と時間帯が異なることで、関わるスタッフの数は2倍・3倍と増加していきます。
そのような状況の中で、前のシフトのスタッフのミスを次のスタッフが受けて謝らなければならなかったり、各セクション・各時間帯のスタッフがひとつのマニュアルに沿って標準的な対応を常に心がける必要があります。これ自体はサービス業として当たり前なのですが、実際にやってみるときちんと実践することは本当に難しいといつも痛感させられています。
様々な雇用体系や働き方のスタッフがいること
最後が、医事課で働くスタッフの多様性。
医事課では、病院雇用の正職員・嘱託職員、派遣職員、委託職員など、様々な雇用元や雇用目的のスタッフが集まり、患者さんの対応という一つの業務に向かって働いていることが、病院の他の事務系部署と大きく異なる点であるといえるでしょう。
またその中にも、親の介護があって急な休みを入れることがある、育休・産休に入るスタッフが多い、子育て中で時短での勤務をしたいなどなど、様々な勤務体系が存在しています。
今流行りの「現場のタイバーシティ」と言えば聞こえは良いですが、
「なんで病院の正職員なのにこんなに働きが悪いんだ!」
「なんであの人は遅刻や欠勤が多いんだ!」
「なんで同じ仕事をしているのに給料はこんなに違うんだ!」
などなど、一緒に働く中で不平等感・不公平感を募らせやすい構造になっていることは確かです。(そして、最後は必ずと言っていいほど給料の話に…。。)
雇用も働き方もバラバラなスタッフが、全員で同じ仕事をするからこそ見えてしまうチームのまとまりの難しさというのが、医事課の運営を難しくしている人材問題の三つ目の理由です。
医事課の人材問題に解決策はあるのか?
なんだか八方塞がりな感じのある医事課の人材問題ですが、解決策はあるのでしょうか?
一年働いてみて思うのは、スタッフレベルでどうこうなる問題はあまりなく、やはり管理職が人材問題に時間を割いてきちんとコミットしなければどうにもならないな~ということです。
ここまで書いてきた問題点について、私が考える対応策は以下のような感じです。
➀大人数で人材流動性の高い集団であること
→全スタッフとの1on1での定期的なミーティング、職員育成のノウハウの効率化
②患者対応という接遇業務の難しさ
→引き継ぎ方法やマニュアルの標準化、職員教育の徹底
③様々な雇用体系や働き方の存在
→各雇用区分の職員の業務定義(ジョブディスクリプション)の明確化
それぞれ、また別の記事で詳細を書いていこうと思いますが、大人数のチームだからこそ、管理職が節目節目できちんと整備できるかが、医事課の人材問題を解決するためのの唯一の方法だと思っています。
個人的に考える医事課の重要性
ここまで書いてきて、「なんて医事課は大変な部署なのか…」と思わされますが、一方で病院運営において医事課は非常に重要な役割を担っていると考えています。
- 診療報酬請求に最も直接的に関わること
- 患者さん対応の窓口となる「病院の顔」であること
- 医療者と患者さんの間をつなぐコーディネーター的役割
- 若手職員を鍛えるノウハウを持った部署であること
などなど、人数が多く投入される部署だけあり、その役割は書いていけばキリがないくらいです。今まで見学させていただいた病院でも、経営的に頑張っている病院は間違いなく医事課に精鋭が揃っていました。
管理職を中心に医事課内の各セクションでどれだけ一つになって成果を高められるかが、医事課の運営だけでなく病院経営にも大きな影響を及ぼせるはずです。医事課で働く方で、ひとりでも多くそのようなモチベーションを持ってもらえれば、日本の病院運営はもっともっと良くなると思っています。
まとめ
・医事課の運営を難しくしている人材問題は、大きく以下の三つ。
➀大人数で人材流動性の高い集団であること
②患者対応という接遇業務の難しさ
③様々な雇用体系や働き方の存在
・大所帯の部署だからこそ、管理職による業務や人間関係の整理がとても重要になってくる。
・管理職を中心に医事課内の各セクションでどれだけ一つになって成果を高められるかが、医事課の運営だけでなく病院経営にも大きな影響を及ぼすはずである。