病院と派遣会社での関係構築について

自分が医事課に2年前に異動したタイミングで取り組んだのが、自部署の派遣職員の業務管理や採用・教育・勤怠管理でした。

ちょうど窓口業務がこれまでの委託化から派遣化に切り替わった時期での担当業務であり、仕事をするスタッフはそのまま変わらないとはいえ、これまで委託化されている中での業務管理や勤怠管理を一つずつ紐解き、部署全体のマネジメントシステムに落とし込む仕事はかなり大変でした。(特に、シフト管理。人によりけりではありましたが、大変なシフトを組むことによる文句がすごかった…)

約2年かけてかなり業務水準や人の出入りを安定化させることができてきたのですが、その中で人材管理という観点から見えるものは数多くありました。今回は「派遣会社との付き合い方」について書きたいと思います。

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派遣会社が求める職場は「人を辞めさせない職場」

まず派遣会社との関係構築にあたり、大前提になるのは「自分の部署が人を辞めさせない職場であるか?」という点です。

業務委託と派遣の違いは何か?を大まかにまとめると、

〇業務委託

・業務に対する責任が委託業者に任される。

・委託元(病院)が委託業者の業務を管理・指導することはできないこと。

〇派遣契約

・業務に対する責任が派遣先企業に任されること。

・派遣元が派遣職員の業務を管理・指導することはできない。(責任は派遣先の病院にある)

という違いがあるため、派遣会社は一度スタッフを送り込むと業務面も含めた指示や管理が出来なくなります。(詳しい話は以下の記事も見てください~)

www.medical-administrate.org

このため、派遣会社から見ると派遣先の会社や部署の中身が非常に見えづらくなるため、退職まで何が起きているかが分からない…なんてこともあるかもしれません。

そのためにも、受け入れ側の組織が

・新人にもわかりやすいような業務マニュアルや業務整理がなされているか?

・働く人に悪影響を与えるようなスタッフが横行していないか?(もしくは、そういった人たちから守る機能や管理者はいるか?)

・新人に対する定期的な面談や声掛けなどのフォロー体制は存在するか?

など、辞めさせない職場づくりに気を配る必要が出てきます。

このあたりは委託会社でも新卒や中途の直接雇用のスタッフでも、同じように気を配るべき部分なのですが、組織内での業務や人間関係が見えにくくなるという意味で、派遣会社からスタッフを受け入れる際は特に注意すべき部分になります。後に述べますが、こういったフォロー体制が「いいスタッフ」を紹介してもらえるための重要なポイントになってきます。

派遣会社の営業担当者さんとはマメにコミュニケーション

私が意識的に行っていたのが、派遣会社の営業担当者さんとのコミュニケーションです。

派遣会社からのスタッフ受入れの場合、業務や管理に対する責任が派遣先企業に任されるため、派遣会社の営業担当者から見ると採用面談の時には立ち会うものの、その後はなかなか口出しできない状況が続くことも多いと思います。

その点で私の病院の営業担当者さんは非常にこまめに派遣スタッフにフォローを入れたり、何かあればすぐに連絡を取ってきてくださるのですが、私からも同じように気になる点やフォローしてほしい個所などを電話やメール、そして病院に営業担当が来ていた時にはその場でつかまえて立ち話で相談を良くしていました。

自分は他の部署や病院と比べてもかなりマメにコミュニケーションをとっていたらしく、先日こんな声掛けを営業担当の方からしていただきました。ありがたや。

信頼関係が構築されていくことで、話やすい関係になっていくのはもちろん、後述するような部署へのメリットも出てくるようになります。

信頼関係が構築されることで得られるもの

〇スタッフのマネジメントのヒントをたくさんもらえる

こちらからマメに営業担当の方とコミュニケーションをとっていると、いつからかポジティブなこと・ネガティブなことも含めて色々な情報を向こうから共有してくれるようになりました。例えば離職を考えようとしているスタッフのことを教えてくれたり、現在の求人状況を教えてくれたり、時には病院内で少し立ち話をしたスタッフが困っている家庭の状況を教えてくれたり。

スタッフのマネジメントに当たって重要な情報を向こうから共有してくれることで、その時々にあった声掛けがしやすくなるので、ミスコミュニケーションも大きく減るようになりました。 

〇採用時に良い人材を紹介してくれやすくなる

個人的にはこれはかなりのメリットだったのですが、営業担当からみて「やりやすい部署、やりやすい相手」になることで、良い人材を紹介してくれやすくなるように感じました。(というか、実際に営業担当の方から「こちらの部署は最近人間関係も安定してますし、良い人材がいれば是非ご紹介したいです!」とまで言っていただきました。)

募集条件に合わせて人材紹介をするのが派遣会社の役割ではありますが、向こうも一人の人間です。派遣先でどちらにするか迷ったときは、信頼できる部署や病院に預けたいと思うのが人情だと思います。パイプを持っておくことで紹介してもらえる人材の幅が増えることは、当たり前ではあるものの、自分にとっては大きな気づきになりました。

まとめ

2020年度はコロナ禍で転職市場が冷え切った一年だったので、前年度比較をどこまでするかは難しいところですが、おかげさまで今年度は10名程度いる派遣スタッフからの退職者を一人も出さずに終わることが出来ました。

現場では日々色んな患者対応や運用が飛び交う中で、そこで働くスタッフを気遣いつつ、でも仕事はさせつつというバランスをとる作業は本当に難しいと改めて痛感した一年でした。ただその中で、部署に良い人材が付き続けてくれることが業務の安定化のためには不可欠であり、そのための努力は自分ができる範囲でやっていかなければいけないのだな、とも感じた一年でもありました。

医療事務は転職・退職も多い職場ではありますが、今回のような派遣会社との関係性づくりがみなさまの部署マネジメントのヒントになれば嬉しいです。