相手に仕事をしてもらうことの難しさと重要性

病院での事務職員の仕事は、「医療者をサポートする」という内容も多く存在します。

例えば、日中臨床業務で忙しい医療者に代わって資料やデータの分析をしたり、部門横断的なプロジェクトのスケジュール調整や複数部署間での意見の取りまとめをして、全体の業務がスムーズに動くような調整をしたりといった具合です。

事務職員の使命は病院の運営・経営をよくすることであり、患者さんのケアや対応に追われることのない事務部門がこのような業務を行うことは、病院にとって効率的で望ましい在り方だと思います。しかし、一つ注意しなければいけないのは「最終的に誰が責任を持っている仕事をサポートしているのか?」という点を決して忘れないことです。

 

例えば私が最近行っている仕事で、「緊急の放射線検査を規定時間内に放射線科医に読んでもらう割合を上げる」というものがあります。救急外来に搬送された患者さんや、入院中に急変した患者さんには、いち早く検査をして、その状況を特定するための放射線科医のレポートが必要になります。この業務の責任者は放射線科の部長であり、迅速にレポートを作成する割合はできるだけ高くキープし続ける必要があります。しかし残念ながら当院では決まった時間までに読まれている割合が低かったため、事務側でデータの分析などをサポートし改善をしていこう、ということで私が最近関わるようになりました。

 

データなどを細かく見た結果、「緊急性が低いと思われるような検査が、『緊急扱い』として多く依頼されている」ということが分かったので、改善の方向性としては「放射線科の考える緊急検査を定義して、それを院内の医師に周知していきましょう」ということを第一段階の目標としました。

幸いにも、放射線科の医師との話し合いはスムーズに進行させることができたので、上記の案を放射線科から院内の会議体でアナウンスをしてもらい、現在は改善がなされるかをチェックするという段階に来ています。

 

自分の仕事を例に出した話でなんだか恥ずかしいですが、今回の仕事では「データ分析・資料作成や院内会議での情報発信のコーディネート」までが事務の仕事、「院内会議への情報発信と、その後の現場レベルでの効果測定やフィードバック」が放射線科の仕事、といったように、お互いがやるべき仕事をきちんと分担して進めることができたと思っています。

このように、改善業務の旗振り役はその業務の主管部署にやってもらうが、改善業務を他者にやってもらうプロセスとその結果をきちんとマネジメントすることは事務がフォローする、という役割分担がとても重要になります。

これができないと、「何でもかんでも事務が決めて、最終的に臨床スタッフはその業務の傍観者になる」という現象が発生してしまいますし、残念ながら当院では実際にそのような場面を他部署で見かけることがあります。

また臨床スタッフが傍観者の立場になってしまうと、プロジェクトの成功体験・失敗体験を何も感じないままに終了してしまい、次の仕事に積極的に関わらなくなる・なんでも事務にやってもらおうとする、といったような悪い癖(?)がついてしまうように思います。

 

「相手に仕事をしてもらうことの難しさ」は、単純に立場の問題もあるような気がしています。医療者側で話をするのはその部署の部長などの管理者であるのに対し、事務部門はスタッフレベルでこのような仕事に関わることが多いです。そのような立場の違いがある場合は、言い方は少し悪いですが「正論で言い返し、相手に仕事をお願いする」というスキルも大切になります。(使うタイミングを間違えないように注意しなければいけませんが…)

ようやく自分も慣れてはきましたが、ここについては従来の性格+仕事の経験値が必要になる分野なので、事務部門内でそのような経験値を詰めるよう、各部署の管理者が注意してマネジメントにあたる必要があると思っています。

 

自分達が業務をすることよりも、他部署を動かして病院の経営・運営をよくすることが多い事務職だからこそ、「臨床現場に当事者意識をもって仕事をしてもらう」ということを強く意識しなければいけないなーと感じる今日この頃です。