「病院DX」なんて号令の前に病院のIT環境整備が必要という話

新しい会社に転職して以降、主に各病院の地域医療連携室の方向けに入退院支援クラウドサービス「CAREBOOK」の紹介から導入までに関わる仕事に多く関わらせめいただいています。さまざまなエリア・規模の病院にオンラインで説明会をしたり、時には病院まで足を運んだりしていますが、病院によって運営形態が全然違うのだなぁと実感する日々です。

その中で実感しているのが、病院におけるIT環境整備の必要性です。昨今「病院DX」という言葉がキーワードになり、様々なセミナーや記事でも特集がされていますが、現場部門へのクラウドサービスの導入支援に携わっていると、キーワードを追いかける前にIT関係の足場固めを各病院が必要としていることを感じます。

今回は「病院DXの前に病院のIT環境整備を」というテーマで、記事を書いていこうと思います。

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病院のIT環境の現状

PC端末が足らない

まず第一に、そもそもとしてネット接続可能なPC端末が足らない病院が非常に多いなと感じます。

部署にもよりますが、一人一台体制はとても珍しく、ネット接続可能なPCは5人に1台で回している、なんてこともしばしば…。もっとも、電子カルテと電話が現場の業務ツールなので、現状はあまり困っていないことも多いようなのですが。

ちなみに余談ですが、その数少ないパソコンも非常に古い機種だったり、Windowsのバージョンアップがされていなかったりと、実利用に問題がありそうな端末もよく見かけます。病院の規模や人員体制によっては情報システム部門専属のスタッフをおけないところも多いと思いますが、基本的なセキュリティ対策として定期的なPCの最新化は非常に大切だよな…と昨今の病院セキュリティ回りの問題を見てよく思います。

ネットワーク環境が揃っていない

続いて、院内のネット環境問題。

「管理部門の事務室にはネット回線が通っているが、現場部門(医事課周辺や病棟など)には最低限のネット回線しかない/〇〇エリアではネットが繋がらない」というお話もよく伺います。

こちらも、現場の方は不便だと思いつつも電子カルテと内線電話(PHS)があれば業務自体は回るので、それ以上の投資価値を管理部門としては見出しにくいのもあるかもしれません。

ただ今後PHSが廃止されていくと、院内で利用される携帯がスマホに置き換わることになっていくと思いますので、ここで院内のネット環境にもテコ入れが入るのかなとは思っていたりします。

クラウドサービスの利用実績がない

最後は、「病院のITインフラ」からは少し離れますが、上記の環境面からもわかる通りクラウドサービスを利用している病院がほとんどないということです。

単発的にオンライン会議でZoomやTeamsを使うことはあっても、日常的にクラウドサービスを利用している病院はほとんど見たことがありません。少なくとも病院という単位では、電子カルテがサーバーやソフトウェアを院内に置くオンプレミス形式であることもあり、クラウドサービスを用いて情報共有する必然性もないため、結果としてクラウドサービスが浸透しにくいという土壌が発生しています。

あと「インターネットを使って仕事をする機会が少ない」という観点で言うと、「メールアドレスは係長以上しか持てない」という病院もよくあります。中には役職に関わらず、「部署単位でひとつしかメールアドレスを使えない」と言う病院も…。

病院内でのインターネット利用が進まない理由

ここまで書いてきていますが、「病院という組織が、インターネットを介さなくても業務フローが回るように設計されてきた」とう点が、インターネット利用が進んでいない最大の理由なのだと思っています。

なので、電子カルテ分野以外のIT投資が業務フローの改善につながらない=予算もつきにくいという考え方から、PC端末が少ない→ネット環境が弱い→クラウドサービスが進みにくい、というサイクルにつながっていくのかもしれません。

あとはセキュリティ対策の観点から、ネット接続できるPCを少なくする・共有化しているということもあるでしょう。病院が持つ患者さんの個人情報をネットから流出させてしまった、というひとつの問題は病院運営の根幹を揺るがすものです。そのためにも性悪説に基づく考え方ですが、管理する対象物をできるだけ減らしていきたい、ということは適切なのかもしれません。

「病院DX」なんて号令の前に病院のITインフラ整備が必要

「病院DX」というキーワードを医療業界ではよく耳にしますが、ある意味では「電子カルテ」と言う最大の業務ツールを中心にして、現代の病院運営のデジタル化は一旦の完成系を見ていると捉えることもできるのかもしれません。

そのうえで、現在の病院DXの議論としてなされている「ITを用いてどのように病院運営を良い方向に変化させるか?」については、やはりクラウドサービスとの融合がカギになってくるでしょう。

特に患者さんと病院とのタッチポイントの改善や、医療機関間での情報共有にはクラウドサービスの力が必須になってくると思います。その変革を起こすにあたり、病院側でネックになってくるのはIT環境の整備であり、クラウドサービスを使いこなしていくための文化と割り切りだと感じます。

「病院DX」なんて言う流行り言葉に惑わされず、確実に来るべき未来に備えて現場での足場固めもしていく病院が、より良いオペレーションを提供できる働きやすい病院に先駆けて近づいていくのかな、と思っています。