中医協資料を読む①(第411回・2019年3月27日)

3月27日に中医協資料がアップされていたので、まとめます。

www.mhlw.go.jp

第411回の議題

  • 医療機器及び臨床検査の保険適用について
  • 医薬品の薬価収載について
  • 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて
  • 2020 年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方について(案)
  • 先進医療会議からの報告について
  • 患者申出療養評価会議からの報告について
  • 診療報酬改定結果検証部会からの報告について
  • 薬価専門部会からの報告について
  • 費用対効果評価専門部会からの報告について
  • 合同部会からの報告について
  • 最近の医療費の動向について

今回も、「2020 年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方」を取り上げたいと思います。

前回の中医協よりも、論点や提出資料が具体化されてきている印象を受けます。前回記事はこちらから。

medical-administrate.hatenablog.com

 

元スライドはこちらからどうぞ~

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000493996.pdf

 

 

トピック:2020 年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方について

提出資料を用いながら、個別の論点を確認していきます。

①年代別の課題点

ア 周産期・乳幼児期(妊娠から出産、新生児、乳幼児)

- 周産期医療体制の確保

- 偶発合併症を有する妊婦の診療体制

- ハイリスク妊婦の診療体制

- 新生児やNICUを退院した児に対する診療体制  など

 

2018年度の改定で新たに算定項目に組み入れられたものの、位置づけが不明瞭として算定自体が取りやめになった「妊婦加算」について、「ハイリスク妊婦の診療体制」という論点でもう一度検討がなされるようです。

実際、出産の年齢は以前と比べて高齢化していると思われますし、「ハイリスク妊婦の受け入れ」を診療報酬上でも評価することは重要ですよね。

今回は具体的な資料などは出ていませんでしたが、どのような評価方法になるのか引き続き注目していきたいと思います。

 

イ 学童期・思春期(就学前、小学生、中学生、高校生、大学生等)

- 予防接種の拡充や少子化による、外来医療・入院医療の変化を踏まえた診療体制

- 小学生期以降におけるかかりつけ医機能の在り方

- 思春期におけるメンタルヘルス対策 など

こちらには資料などが特になかったのですが、予防接種の拡充や思春期におけるメンタルヘルス対策などは現代的なテーマですね。

予防接種については、Twitterなどでもエビデンスのない反対派の意見が出回っていることも多々見かけます。基本的な予防接種は公費負担となっていますが、それ以外の多くは自費診療扱いとなっており、公衆衛生の向上のためにも、予防接種を診療報酬でも評価し、正しい予防医療が提供される体制に近づくとよいなと思います。

 

ウ 青年期・壮年期・中年期(20 代~30 代、40 代~60 代)

- 仕事との両立のための産業保健との連携

生活習慣病に対する継続的な管理

生活習慣病以外の疾患の管理

働く世代の健康不安へのアプローチ(産業保健との連携、生活習慣病対策など)の論点が出てきています。主に外来・予防診療領域の診療報酬に反映されていく内容になりそうです。

 

f:id:espimas:20190331124328j:plain

f:id:espimas:20190331124707j:plain

エ 高齢期

- 増加する認知症への対応

- 重症度や居住形態を踏まえた更なる医療体制の構築

- フレイル等患者の特性に応じた取組 など

※フレイル…健常から要介護へ移行する中間の段階(具体的には、加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指す)

 

高齢者の世帯構造の変化や増加する認知症への対応などは、高齢化社会の日本にとって待ったなしのテーマですね。主に介護保険の領域や医療保険での療養・地域包括ケア病棟向けの論点になっていきそうです。

f:id:espimas:20190331125054j:plain

f:id:espimas:20190331125100j:plain

f:id:espimas:20190331125043j:plain

f:id:espimas:20190331125049j:plain

オ 人生の最終段階

- 人生の最終段階における多職種による医療・ケアの取組

- 意思決定の支援(人生会議(ACP)等)の普及・定着に向けた取組 など

 

ACP=アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略です。

ACPとは、患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味しています。

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が2018年3月に厚労省から出ていますので、この取り組みが診療報酬にも反映されていくことと予想されます。

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf

 

--------------------------------

この続きで、「昨今の医療と関連性の高いテーマ」の課題整理もあるのですが、長くなってしまったので今回はここまでです。

いろいろ批判されている日本の医療制度ですが、個別の論点を見ると現代の問題を踏まえて診療報酬を改定しているというところが見えて、勉強になりますね!