「病院におけるIT活用の推進」
「病院における人手不足問題」
は、直近の病院運営において重要テーマとして取り上げられることが多いです。特に前者は『医療DX(デジタルトランスフォーメーション)』とも呼ばれ、医療界隈ではいろんなところで耳にする機会は多いのではないでしょうか。
二つのテーマは密接な関係にありますが、つなぎ方がとても大切であり、そこを間違えると医療機関にとって使えないITシステムが入り、人手不足の現場にその管理の仕事が増えてしまう、という悪循環にもつながりうる話になると思っています。
先週、Twitterでこんなつぶやきをしたのですが、これに対して多くのリアクションやご意見をいただきました。今回は様々な立場から、このテーマについての見解をまとめていきたいと思います。
「現場で人が足らない」問題は、
— 病院で働く事務職員 (@medical_admini) 2021年5月18日
・人がやる仕事をITで代替化・効率化
・業務を切り出して外部企業に委託する
のどちらかがいいのかなと最近思ってる。
「人が足らないから人を入れる」は、教育コストやスタッフ管理の労力など考えると割に合わない。
もっとも、その業務の切り出しや外注の判断にも管理センスが問われるので最終的にはマネジメント能力の問題になってくるのですが。
— 病院で働く事務職員 (@medical_admini) 2021年5月18日
IT活用を考える際の問題点
どちらも難しい気がします。
— 難波津の蟹 (@RideRead) 2021年5月18日
前者はIT得意な人が去るとメンテ不能になり、後者はできる業者がほぼないからです。
ITによる代替化・効率化は、結局「システムの仕事が正しいと判断できる人間」を確保し続ける必要があるので、近頃はなんとなく難しい気がしてます。 https://t.co/fTHpkkiEEn
ITによる効率化は、現場側(ユーザ側)にとっては当然メリットがあるけど、管理側(情シス側)にとっては、管理すべき対象が広がって負担になるだけ。。いざ障害が発生したら業務影響につながるし。
— ワーカホリック (@workaholic_2021) 2021年5月19日
でも現場優先ですからね。 https://t.co/fdEvjdoDfG
医療運営とITに詳しく、自院のスタッフと円滑なコミュニケーションがとれ、現状の課題を吸い上げ、業務改善課題として昇華させ、外注先へうまく伝える。このうまく伝えるということがポイントだと思っていて、これ次第で削減率は大きく変わると思っている。そしてほとんどの病院はそんな人材いない。 https://t.co/KiHUGLjyUh
— なこあ (@__nakoa__) 2021年5月18日
まずは業務整理が必要!
希望は前者の方ですが、早く解決出来るのは後者ですね。ブログでも散々言ってますが、当院は窓口に1日いてから自分の仕事が始まるので。。レセか窓口どちらかを委託するだけでも効率化できると思います。人を入れるだけでは根本的な解決になってないので、下っ端としては上に頑張って欲しいですね。 https://t.co/XQknbN3yWO
— アオギリ (@aogiri_blog) 2021年5月19日
業務が標準化できていればIT化/外注化は容易、教育/管理も負担軽減になると思っています。あらゆる要望や政策社会変化に対応しなければならないという背景が標準化を妨げ、結果的に万年リソース不足、アナログ最強になってしまっている感じ。 https://t.co/EUygYsSdL3
— 病院広報バロンデセ (@_HOSPR) 2021年5月20日
最近思ったのは
— ささがさん (@sasaga012) 2021年5月18日
「動線の全面的な見直しと再評価」
これがあまり時間もかけずに
行える事かなと思ってたり。
人が抜けたのに同じように動いては
負担は大きくなる。ならばこじんまりと
規模を縮小させてあげるとかが良いのかなと思う。 https://t.co/eVHrZ0Ir3p
前提が違ったらすみません。個人的にはまずアナログ作業での効率化を提案したいです。人が足らないが作業効率は悪くないということは余りないのでまず見直し、ITで代替するにもどんな代替えかは選べるので現場とのフィット感で選べばいいのではとも思います。外部企業はコストに見合えば…。 https://t.co/OUtNbfLi4n
— うだつのあがらない医療事務員 (@kkk160111) 2021年5月18日
IT活用×外注化が解決のカギ?
「病院の人がやる仕事を「IT」で代替化・効率化させる」のを外注するってのはどうでしょう。@medical_admini がいた病院は優秀なクリニカルSEが多いですし、当院も尖った人材が割といるほうですが「完全に恵まれている側」です。
— Takahiro_Inukai@医療経営を考える人 (@Takahiro_Inukai) 2021年5月18日
人材を確保できないためにIT投資計画〜運用まで弱い病院は多いはず。 https://t.co/tTErdXr8fH
各病院でやろうと思ったら、サーバサイド(HW〜MW)、NWで1〜2名ずつは必要だし、電カル・レセコン、検査、薬剤、OP、集中系で4名。管理職2名(上流担当が望ましい)となると、優秀な10名は必要。
— Takahiro_Inukai@医療経営を考える人 (@Takahiro_Inukai) 2021年5月18日
HRだけでざっくり1億必要です。
XaaSに切り替えていければ、かなり浮くはず。
>>人材を確保できないためにIT投資計画〜運用まで弱い病院
— 難波津の蟹 (@RideRead) 2021年5月18日
これは本当に多いでしょうね・・・。
クリニカルSEの層が厚い病院さんが、ITによる代替化・効率化に先駆的に取り組まれるのを期待したいです・・・。
そもそもとして…医療現場が複雑化しているという話
看護業務で言えば、うちの部署は10年前に比べてスタッフの人数は10人程増えたけど(これも画期的)10年で治療が高度化し、看護業務もより專門化・複雑化した業務が増えたので「人が足らないから人を入れる」が解決策ではないことに納得。現場目線ではIT化・外注できることはたくさんあると感じている。 https://t.co/nivOBHXYa4
— おくら@4歳息子&0歳娘 (@8AZJUXYiXPb2H6w) 2021年5月19日
これマジでそうで、「コンプライアンス」やら「医療の質」やら「サービス向上」やらで、どんどん現場の業務が増えてるんだよね。人増やしても人増やしても全然足りない。業務プロセスの再構築が必須。
— tefujita (@tefujita) 2021年5月19日
医療機関のIT化を難しさせる問題
最後にこの話題とは直接関係ないのですが、医療機関のIT化を難しさせている問題についてTwitterで見た話をいくつか取り上げたいと思います。
まぁよくわかんないけど、大病院にウェブ予約が導入させてないのを感じとって、
— 小迫 正実 (こさこ まさみ) (@masamikosako) 2021年5月17日
ウェブ予約と医療の組み合わせが難しいのをみんな察して欲しかったです。
みんなというのは、まぁみんなです。
こちらはコロナワクチンの話がきっかけですが、Webと医療の組み合わせが難しい領域があることをを踏まえたうえで、IT施策を考えていく必要があります。
個人的に素晴らしいIT施策をされている事例があっても、横展開が極めて難しいなとも思っていて。
— Takahiro_Inukai@医療経営を考える人 (@Takahiro_Inukai) 2021年5月18日
病院は実は「ガラパゴス島群島」なのではないかと。
独自進化と内部整理がされていることが多いので、ピュアに横展開できない。ここを平たくするには医療運営とITに詳しい人材しかねぇんですよね。
いち医療機関でIT活用がうまくいっていても、その横展開が難しいという話。医療機関ごとにオペレーションが違うと、ITツールにも合う合わないが出てきますよね。
最近病院の「オンプレミス神話」が少しずつ崩れはじめた気がするけど、そんな気がするのは私だけだろうか
— さわゆう🌻 (@sawa_yooou) 2021年5月12日
オンプレミス(英語: on-premises)とは、情報システムのハードウェアを病院内に設置・導入して管理する運用形態です。パッケージ型電子カルテのイメージで、対義語はクラウドでの管理をイメージしていただけるとわかりやすいと思います。
これまで医療機関はオンプレミス型でのIT運用を進めてきているので、セキュリティ管理や院内ネットワークとの接続などの面で、なかなかクラウドサービスの普及が進みにくいという現実もあります。
楽にするための仕組みを導入したら、今までのやり方を変えたくなくて、今までの業務に加えて新しい仕組みに対応する業務を作り、新しい仕組みにしたらかえって忙しくなったと怒られる、笑えないことがあり得るのがこの業界。 https://t.co/pJnrv0bE4D
— K Mat (@KMat74562541) 2021年5月19日
最後がそもそものところで、「今までのやり方を変えたくない」という現場からの抵抗がありますよ、という話です。いや、この辺り実は本当に難しくて、現状必須のITツールって電子カルテだけだと思うので、それ以外のITツールに関しては「こっちを使いたい!」と思わせるだけの優れた技術や使い勝手の良さ(か強烈なトップダウン)が必要不可欠なんですよね…。
個人的に思うこと
ここまで書くと、
「ITを活用するならば、病院の運用を変えていかないといけない」
「そもそも病院内の業務が複雑が・煩雑化してきている」
「病院の内部環境・外部環境で、ITになじまない層が一定数存在する」
「IT活用と現場オペレーションをつなげられる院内人材が不足している」
などなど、難しい問題が山積していることが改めて分かります。
じゃあ病院におけるIT化は進まないのかといわれると、多分そんなこともなくて、他業界からは遅れながらも便利なものは導入されていき少しずつ進んでいくと信じています。
ただそこで大切なのは、
「IT企業側:現場の課題を正しく理解すること」
「病院側:現場の生産性を上げるために、ITツールに合わせた現場運用を考えていくこと」
のすり合わせなのかなと思っています。あとは、場合によっては今回のまとめで取り上げたような「病院の仕事をITで代替化・効率化させることを外注する」などの合わせ技も必要になってきそうです。
『医療DX(デジタルトランスフォーメーション)』の実態は、全体解決というよりかは、個々の現場の課題を一つずつ解決していくことの積み重ねなのかな、と思っています。
*こちらの記事にTweetを取り上げさせていただいたみなさま、ありがとうございました。意図と違うツイートがあれば記事内から削除しますので、その際はご連絡いただけると助かります。