転職してから、「ザ・モデル」という本を読みました。
セールスフォースドットコムで実践されていた営業プロセスを紹介している本で、その界隈ではめちゃめちゃ有名な本なのですが、BtoBのマーケティングや営業という点では病院の医療連携の在り方にもかなり応用できる部分があるなぁと感じました。
そこで得た着想をもとに、今回から何回かに分けて「営業活動から考える医療連携」について記事を書きたいと思います。
第1回目のテーマは、「集患活動における4つの営業プロセス」です。
「ザ・モデル」の概要
本当にざっくりと「ザ・モデル」に書いてあることをまとめると、以下のような内容になっています。
- 営業プロセスは、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つのステップに分けられる。
- 企業としての受注は、4つのステップを経たうえで発生する成功である。
- それぞれを一人の担当者がすべて行うのではなく、分業体制をとることで、営業活動の成果を最大化することができる。
従来の営業スタイルでは、ひとりの営業担当者が自ら見込み顧客のリストを整備し、テレアポや商談設定を通じて提案し、商談成立に持ち込むまで、またその後の顧客フォローや新規提案に至るまでのすべてを担当することが一般的でした。
こうした手法では、顧客との連携は強化できる反面、
・担当者は膨大な業務量を抱えることになる
・必ずしも受注につながる可能性が高くない見込み顧客を多数抱えざるを得ない
・ひとりの営業マンの管理が難しくなる
などの状況にもつながりがちであり、結果として営業効率が高まらないこともあります。
ザ・モデルでは、このような状況を改善するために営業プロセスを分業化することで、営業担当者を「見込み顧客の獲得から商談設定」「受注後の顧客フォローの業務」から解放し、提案から商談成立までの業務に集中してもらうことが可能になると解説しています。
そしてこの分業体制は、ひとりのエーススタッフに頼りがちな医療連携室の体制づくりにも応用できるなぁと感じました。
集患活動における4つの営業プロセス
「ザ・モデル」では、営業プロセスをマーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つに分類していますが、病院における集患活動では馴染みにくい用語もあると思います。そこで、それぞれ以下の四つの用語に営業プロセスを置き換えて、各プロセスでどのような業務が発生しているのか?を考えてみましょう。
1.PR・広報
まず1つ目のステップが、「PR・広報活動」
目的は、自院の存在を患者さん・地域医療機関に認知することになります。
具体的な業務としては、病院ホームページや広報誌の作成・管理といった基本中の基本の広報活動から、健康講座の開催や外部メディアによる紹介を通じた集患活動など、より能動的なPR活動まで幅広く存在します。
2.内勤営業
2つ目のステップが、「内勤営業」
目的は、患者さんの紹介・ 受診につながるための院内の体制づくりです。
具体的な業務としては、患者受入の院内調整(受診問い合わせへに対する院内コーディネート・紹介先案内)をメインにしつつ、登録医とのコミュニケーションや連携体制構築、外勤営業担当者のサポート全般など、黒子ながらも極めて重要な業務が含まれています。
3.外勤営業
3つ目のステップが、「外勤営業」
目的は、地域医療機関から自院へ患者さんを紹介してもらうための営業活動です。
具体的な業務としては、クリニック・医療機関訪問を通じた関係性づくりや診療内容の伝達といったいわゆる「病院営業」から、救急隊との関係構築・医師バイトの派遣と言ったより高度な活動まで様々です。
4.顧客フォロー
最後の4つ目のステップが、「顧客フォロー」
目的は、継続的に受診や紹介になるようフォローを行うことです。
具体的な業務としては、返書管理や症例カンファレンスを通じて地域医療機関との丁寧なコミュニケーション、そしてなんと言っても患者さんの臨機応変な受け入れがカギになるでしょう。
医療連携室の現状
下記の図は、ここまでの話をもとに作成した「医療機関の4つの営業プロセス」です。
一方で病院の医療連携室の体制を考えたとき、4つの営業プロセスは連動していなかったり、1人のスタッフの方がすべてを行っていることも多いのではないでしょうか。
例えば「新規入院患者を獲得する」という医療連携室の大きなミッションを考えたとき、こんな状態は営業プロセスと照らし合わせると目的と業務がチグハグになってしまっていることがわかります。
PR・広報…広報室が経てた年度計画に基づき、広報誌発行や健康講座を実施しているが、病院として強化したいコンテンツがうまく組み込めていない。病院ホームページは総務課で管理しており、最低限のお知らせ更新に留まっているのが現状。
外勤営業…医療連携室の課長とその下の若手職員が手の空いた時に実施。ただし、2人とも日中は窓口対応や電話対応に追われており、医師動向でのクリニック訪問は半年に1回お得意様に行くのがやっとの状況。
顧客フォロー…各診療科の受付(医事課)が空いた時間で返書対応を行っているが、近隣の医療機関から「もっと早く患者さんの状況を教えてほしかった」と連携室宛に電話をもらうことも。
どんな会社のどんな仕事でも、部署の縦割りで本来果たすべき目的が後回しになってしまう、、という現象は起きるものだと思っていますが、医療機関にとって新規患者の獲得はこれからの急性期病院の生き残りにとっての至上命題。
「あれ、これってうちの病院かも…」と思った方は、営業プロセスから逆算して業務整理をしていく必要があるのかもしれません。(と言いつつ、自分がいた病院もこんな感じだなぁと思っていますが…業務管理は本当に難しいです)
まとめ
今回は「集患活動における4つの営業プロセス」をテーマに総論的な内容で記事を書いていきましたが、次回以降はそれぞれのプロセスごとにどのような目的を達成すべきか?どのような施策を打つべきか?を考えていければと思います。
少し長めの連載?となりますが、お付き合い、そしてフィードバックをガシガシといただければ嬉しいです!よろしくお願いいたします!