前の部署にいた時、看護師の業務改善の仕事に関わったことがありました。
その時に看護師から上がった意見の一つに、「患者が退院する当日の業務が多いため、朝早くから来てその準備する必要がある」というものがありました。
聞いてみると、退院日当日は退院薬の準備、各書類の準備、会計ができたかどうかの医事課への電話連絡、患者への今後の段取りの説明…確かに忙しそう。
この現象を見ると、例えば「看護師の午前のシフト人数を手厚くする」「書類の準備は事務スタッフに手伝ってもらう」など、人やお金を投入する、または一部の仕事を別の部署にお願いするといった解決策が出そうですが、上司の考えた解決策は違うところにありました。
「医師に退院前日の早い時間に退院のオーダーを入れてもらえばいいのでは?」
患者の退院日に実際に手を動かしているのは看護師ですが、退院することを決めるのは医師です。
つまり、医師が退院前日までに退院日を決定し、早いうちからカルテに退院オーダーを出しておけば、看護師が事前に退院日の業務の準備ができるわけです。
退院日の業務を「①前日までに出来るもの」「②当日しか出来ないもの」の二つに分け、
①については前日までに済ませてしまえるような仕組みを作ればいいのでは?、というのが上司のアイデアでした。看護師の動きとして、午前中はルーチンの仕事に加え入退院の患者の対応に追われますが、午後はルーチンの仕事がほとんどなので、午後に翌日分の退院準備をすることができます。
このような考えの下、上司は「退院当日の看護師業務削減」のための問題点を、退院前日の医師の退院の意思決定&カルテへの入力という業務に設定したのです。
実際に調べてみると、退院オーダーをカルテに入力する時刻は退院日前日の夕方以降(=夕方の回診が終わってから)が多く、その結果夜勤帯~翌日の日勤帯の看護師が退院の準備に追われていました。
そこで診療科別・医師別にいつ退院オーダーを入力しているかを調査・フィードバックし、「退院オーダーを早く入れましょう」というキャンペーンを張って医師の行動を変えることで、患者退院日の業務のうち「前日までに出来るもの」をこなてしまい、退院当日の看護師業務削減の削減に成功した…というストーリーでした。
ちなみに退院予定が早く分かるようになったおかげで、退院薬の指導をする薬剤師、退院の会計を作る医事課の仕事も楽になった、というおまけエピソードまでついてきました。
様々な業務が絡み合っている退院当日の看護師の動きの中から、「退院前日の医師のオーダー入力」という問題点を設定し、そこにアプローチしたこの上司の仕事は、今までの社会人生活の中で特に印象に残っている仕事の一つです。
ということで、問題解決には論点の設定が大切ですよ!、というお話でした。