大病院における外来の待ち時間問題を考える(問題整理編)

入院機能を持ち、入院につなげるための外来診察を行っているような病院(いわゆる「地域の大病院」と言われるような医療機関)の患者サービスにおける問題の一つが、「外来における待ち時間」です。

恐らく、どの病院でも外来運営の最も大きな課題の一つとして「待ち時間問題」が出ているのではないかと思います。

今回は、大病院における外来の待ち時間問題について、「待ち時間を発生させる病院のオペレーション」と「待ち時間を解消するための運用案」を考えていきたいと思います。

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外来受診における患者フロー

病院によって順序が異なりますが、一連の患者フローとして以下のようなものになると思っています。

  1. 初診予約を取得する
  2. 指定された日時に病院に来院する
  3. 患者登録を行う(氏名や生年月日、保険証情報などの登録)
  4. 各科の外来に行き、受付を行う
  5. 問診表の記入を行う
  6. 医師の診察を受ける
  7. (その日に検査が必要であれば)血液検査や放射線検査(レントゲン・CTなど)を受ける
  8. (検査後の再診察が必要であれば)医師の診察を受ける
  9. 処方箋を受け取る
  10. 当日分の会計を行う
  11. 病院内または病院外の薬局で薬を受け取る

※再診患者の場合は、1~3までが初診時に完了していますので、4の「当日の外来の受付を行う」から始まるイメージです。

大きく「病院に来るまでの待ち」「病院に来てから診察を受けるまでの待ち」「診察が終わってから帰宅するまでの待ち」の三つに分けて、それぞれのプロセスでどのような時間がかかっているのかを考察してみました。

A.病院に受診する予約を取るまでの待ち時間

病院に受診する前から、待ち時間が実は発生しています。

➀予約を取ろうと思っても、病院の予約コールセンターに電話がつながらない

②コールセンターに電話がつながっても、予約を取った日から受診までかなり時間が開く

といった具合に、「予約後に即受診」とはなかなかいかないのが現実です。それぞれ、病院側の状況は以下のようになっています。

➀病院の予約コールセンターに電話がつながらない

問い合わせに対応できるだけのスタッフがいないという、単純なマンパワーの問題があります。そしてマンパワーを増やそうにも、「病院の予約コールセンター」に求められるスタッフのスキルが高く、教育に時間がかかることが人員増を一気にできない原因となっています。

ひとつの予約取得を一人で出来るようになるまでに、

「病院内にある診療科と対応できる疾患名、医師の専門分野を覚える」

電子カルテの操作方法と予約ルールを理解する」

「診療科の医師や看護師に電話越しで素早く受診相談できるコミュニケーションスキルを身に着ける」

など、一つの予約取得には様々な知識と経験が必要になります。ただの「電話を取る仕事」だと思ったら大間違いなのです。。

②外来診察を行う医師の予約が取れない

こちらについては、医師側の診察に充てられる時間のキャパシティーの問題です。1週間の中で、入院患者の治療や手術の時間に多くを取られる中で外来診察を行い、かつ再診の患者も一定数見なければいけない…となると、「初診枠」に充てられる時間数はかなり限られてきます。

B.病院に来院し、受診するまでの待ち時間

次に、受診当日の待ち時間についてです。いわゆる「待ち時間」問題は、この点を中心に語られることが多いですね。

➀患者側の事務手続き

患者登録用紙や問診票の記入など、患者側での事務手続きと、それを病院側で受け取り、処理するまでの時間がまず発生します。どちらとも、電子カルテに入力する必要があるため、受け取って終わりにできないのが難しいところです。

②医師の診察・検査の待ち時間

「医師の診察」がすべて予定時刻に終わればいいのですが、なかなかそうはいかないのが現状です。診察の合間には病棟で受け持っている患者のことについて電話がかかってきたり、緊急で一人見てほしいという依頼が来ることもあるでしょう。また、診察が終わった後には、その日の診察結果のカルテ記載や、検査や処方などのオーダー入力もあります。

検査についても同じことがいえるので、医師の診察×検査の待ち時間でどんどん患者さんの院内滞在時間は膨れ上がっていきます。

古い記事ですが、ホリエモンが大学病院をかかった際にこんな不満を述べていました。別にこの病院を晒上げたいつもりは毛頭なく、どの病院(私の勤務先も含め…)でも多かれ少なかれ同じような状況になっているのではないかと思います。

horiemon.com

おそらく泌尿器科なので、急性の尿道結石とかで緊急の患者とかがどんどん入れられて、予約入れてる緊急度の低い患者は後回しにされるモデルなんだろうけど、これってどうになからなんのかね。そもそも愚痴を聞いてもらいたいだけの老人とかさ、分からない事を丁寧に説明するだけの説明員とか医師免許ナシでもできる仕事とかあるといいのに(単にネットで調べたことを言ってるだけでも十分役に立つとおもうんだが)。他にも現在の混雑状況をウェブで見られたりとかメールやLINEとかで診察可能な時間を教えてくれたりとかね。

 さすがホリエモン、色々鋭い…。。

C.受診が終わり、その日の薬をもらうまでの待ち時間

受診が終わった後も待ち時間は発生します。

➀外来会計の待ち時間

その日の診察を終えた患者さんが、会計フロアで待っている光景はよく見たことがあるのではないかと思います。外来の会計では、その日受診した患者の情報から「この検査は算定していいか?」「診療行為に対して管理料の算定ミスがないか?」などを細かくチェックしています。患者さんに返金や追加料金の二度手間をかけないようにするための仕事ではあるのですが、結果として待ち時間が発生しているのも事実です。

②処方をもらうための待ち時間

ようやく受診が終わったか…と思いきや、最後の難関が「処方箋をもらうまでの時間」。院内薬局でも院外薬局でも、処方箋を出してから調剤作業が始まります。ピークタイムだと、そこでも10分~20分待たされることもしばしば…。

院外薬局は、カルテが共通化されていないので患者情報の登録が再度かかります。院内薬局だと電子カルテは共通化されており、オーダーから薬を準備することもある程度先回りはできそうですが、調剤するための人員数を揃える必要があり、病院側の人件費の問題が出てきますね。

まとめ

色々な要素が絡み合っている病院の待ち時間問題。しかし、ひとつひとつの問題をかみ砕くと、意外と原因はシンプルなものであり、現場での工夫やオペレーションの見直し、ITツールの活用などを通じて解決できるものも多いと思っています。

長くなってきたので、今回は問題提起のみで終了。後半で、個人的に考える解決策を書いていきたいと思います!