目標管理制度の活用による部署の活性化

4月から管理職になって3か月が経ちました。想像以上に色んなことに巻き込まれ、それを何とか乗り切る毎日です。

自分が管理職になった時に必ずやろうと思っていたことが、社内の目標管理制度を通じて部署としてやるべきことをスタッフ全員に明確に伝えることでした。

目標管理制度(MBO:Management by Objectivesとも呼ばれます)」とは、個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度で、マネジメント理論の大家であるドラッガーが自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念です。

目標管理制度(MBO)とは | 人事のプロを支援する | HRプロ

 恐らくどの会社でも一般的な目標管理の方法として用いられている手法で、みなさんも「上半期は○○と××という目標で仕事に取り組んでね…」といった具合に上司と半年に一度くらいの頻度で面談をする機会があるのではないかと思います。

私の病院では、目標の達成度に応じてその期の賞与金額が連動し、またその評価結果が昇格・昇進の推薦にも一定の影響力を持っています。にもかかわらず、失礼な話ではありますが、私自身がこれまで所属してきた部署では、目標管理制度を通じてうまく評価されたことがないと感じていました。

管理職が目標管理制度を上手く使えていないということは、部下に不平・不満がたまる原因にもつながります。実際に私は、特に以下の3点についてモヤモヤを感じながら仕事をしていました。

・部署全体としての目標が不明瞭であること

・職位や等級と目標レベルの不一致があること

・目標の進捗管理がなされないこと

実際に、このようなモヤモヤから上司に不信感・不満感を持ったことも多いですし、納得のいかない結果が賞与の金額や昇格試験の推薦に影響することが分かった時はやるせない気持ちになりました。

そんな思いは自分が部下を持った時にはさせないようにしよう!と思い、4月に自分自身が管理職になった時にはまず目標管理の話を全スタッフと話し合いました。

開始してまだ3か月程度ではありますが、今回は、私が取り組んだ目標管理制度のテコ入れ策をご紹介できればと思います。

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➀部署全体としての目標が不明瞭であること

私の勤務する病院では、目標管理の制度自体はあるものの、部署全体としての目標をはっきりとスタッフに打ち出すわけでもなく、目標の立て方は実質的に各スタッフの申し出ベースで決まっている部署がほとんどでした。つまり、同じ部署で働くスタッフが10名いたとすれば、10通りの目標が存在するような状況でした。

それぞれが全く別の仕事をしていればそれでもいいのですが、部署でくくられているということは仕事の共通項が必ずあるはずで、部署全体としての目標を明確にすることが、部署のパフォーマンス管理をするうえでとても重要であると感じていました。また、スタッフ間で目標のレベル感のばらつきがあることは、そこで働くスタッフ同士でのいがみ合いにもつながりかねません。

私自身が目標管理をする立場になって行ったのは、「各スタッフから管理職へ目標を申し出てもらう」のではなく、「管理職から各スタッフへ目標を提案する」ことでした。

例えば医事課であれば、

1.窓口業務や難しい患者さんへの対応

2.レセプト管理

3.それぞれが所属する委員会やプロジェクトへの貢献

が大きく共通している業務になりますが、4月上旬の時点で各スタッフと相談したうえで、これらの業務を部署の目標として私が取りまとめて明確にしました。医事課は全スタッフがほぼ同じ業務をしている部署なので合意を取ることは難しくなく、逆にスタッフからは「目標を自分でいちいち考えなくてもいいんですね!」とポジティブな返事までもらいました。

まだ目標を立ててから3か月足らずですが、部署としての目標をある程度明確にできたことで、全員が同じ方向で協力し合いながら働けているような感触があります。特に心身ともに疲労しやすい難しい患者さんの対応については、「全員が同じ程度の件数を担当できるように分担する」という方針を作り、具体的な件数を目標に組み込んだことで、特定のスタッフに負担が偏ることなく運営が出来るようになってきました。

②職位や等級と目標レベルの不一致があること

➀で述べた「部署全体としての目標が不明瞭であること」と併せて改善したいと思っていたのが、職位や等級と目標レベルの不一致でした。

一般論として、経験年数や給料の金額に応じて、仕事の難易度や分量というのは決まるべきという考えがあると思います。しかし、これまでの目標管理を見ると、出来るスタッフに対しては職位や等級で求められる水準を越えた目標を上司から持ち掛けられる一方で、ものが言いにくい・やる気が低いスタッフに対しては要求水準を曖昧にすることもあったように感じていました。

やる気や能力に合わせて仕事を振っていくこと自体は、そのスタッフの成長の機会になるので、人を見ながら積極的に行うべきというのが持論です。ですが一方で、個人の評価はその時点での等級や職位に基づいて行うべきであり、その上で現時点でのポジションを大きく越えた活躍を見せたスタッフには相当の評価を与えることが人事評価やモチベーション管理としては望ましいと、実体験からずっと思っていました。

今回部署全体の目標を作ったことで、職位や等級に応じた目標管理もスムーズに行うことが出来ました。例えば、優・良・可の3段階評価があるとすれば、3年目の職員であれば「優」になる仕事でも、同じ働きを30年目の職員がしていたら「可」になる可能性もありますよ、といった具合です。

また部署全体の目標設定と併せて、等級や職位に基づいた目標管理の考え方を改めて各スタッフに伝えられたことで、特に経験のある先輩方の協力をより得やすくなったと感じています。管理職である自分自身だけでなく、経験のある先輩方の協力をもらいながらクレーム対応や院内での運用調整といったタフな仕事を乗り切っていくことで、部署全体の力も引き上げられると実感しています。

③目標の進捗管理がなされないこと

最後が、「目標の進捗管理の実施」です。

これまでも、自分自身に合った目標を提案してくれたり、役職や等級を配慮して目標設定をしてくれた上司はいたのですが、「期末に一度きりの評価面談」で終わらせることがほとんどでした。

目標管理制度の考え方は、「期首に目標設定→期末に目標の評価」という流れになりますが、私自身はこれに加えて「期中の目標達成度」が知りたいとずっと思っていました。

期首に立てた目標に対して、自分自身の達成度は現在どの程度になるのか、残り分を達成するには何が足らないのか。これを知ることで、自分自身の現時点の仕事ぶりが分かるので落ち着いて仕事が出来ますし、期末評価の際に上司とのギャップに悩むことも減るはずです。

また期中の目標達成度を確認する面談は、目標の話だけでなく、管理職とスタッフで1対1で直近の部署の状況や気になっていることについて意見交換もできるので、貴重なコミュニケーションの場にもなっています。

ちなみに、1対1で話す機会を設けることは「1on1」とも呼ばれ、一般企業では1週間に一度の頻度で行っているところもあるそうです。目標の進捗面談は2か月に一度行うことにしているので、それと比べると頻度はかなり落ちますが、それでも他部署と比べると定期的なコミュニケーションの機会は持てているのではないかと思っています。

まとめ

今回は、この3か月で取り組んできた目標管理制度の活用についてまとめてきました。

最後にひとつ付け加えておきたいこととして、私自身がやりたいことは「各スタッフへのフェアな目標管理」であって、「スタッフを細かな目標で縛り上げる」ことではないということです。(当然、「これまでよりも評価を辛くつける」ことも全く考えていません。)

大きな枠組みは管理職が中心となって作り部署内で共有したうえで、細かい部分はその場の各自の判断で乗り切ってもらうことが、私が現時点で考えるマネジメントのバランスの最適解です。

部署の中で年次が低い自分自身が管理職になり、どのように回りを巻き込んで仕事をしていくかを考えた時に、現時点で出した答えが既存の一番大きな制度である「人事評価に関連する目標管理」を中心に据えることでした。 

組織のマネジメントに正解はありませんが、新しい独自制度を打ち出して中途半端になるよりは、既存の人事制度をうまく活用することが正解への近道だと感じています。これからの部署の仕事の在り方によって少しずつ手を加えながら、いまの部署をより良いチームにしていければと思っています。