先日、Xのポストで「ゼロ動線病院」という話題が盛り上がっていました。
病院建替えの際は、職員動線を最優先にって言って無視されてるけど、今月の月刊保険診療のゼロ動線病棟を見て、こういうことよと膝を打つなど。
— K Mat (@KMat74562541) 2025年8月19日
調べてみると、鹿児島県にある病院の「キラメキテラスヘルスケアホスピタル」で取り入れられた病院建築で、病棟の構造イメージはこんな感じ。

スタッフエリアがそのまま各病室への動線になっている、まさしく「ゼロ動線病院」。
今後の病院建て替え時の新しい選択肢かも?と感じたので、少し詳しく調べてみました。
ゼロ動線病院って?
ほぼ三菱地所設計のホームページからの引用になりますが、
①廊下・病室・スタッフステーションのイメージ
②スタッフステーションの構造
③病棟内のデイコーナー
の三点についてまとめてみます。
①廊下・病室・スタッフステーションのイメージ
廊下が面会スペースになっている、というのは斬新な設計ですね!
面会者と医療スタッフの入り口は分かれているイメージのようです。

一般的な病室は廊下に面していて、そこから面会者のデイコーナーやスタッフステーションへと長い距離を隔ててつながっています。その距離をなくしたのがこの病室プランです。病室には扉が2つあります。片方の扉の向こうはスタッフステーションに直結。窓越しにいつも見守ってくれます。反対側の扉の向こうは縁側廊下。程よい日差しと新鮮な空気の通う幅広縁側廊下は、見舞客と患者が触れあう優しいロビーです。患者・スタッフの双方にとってメリットのある新しい療養環境を提案しています。
②スタッフステーションの構造
「ゼロ動線病院」のキモであるスタッフステーションの構造。
①でも書きましたが、家族とスタッフの動線が分かれているのが特徴です。

病室の窓の外は外部であることが一般的ですが、ここでは扉とその向こうに広い廊下(縁側廊下)を設けました。縁側廊下は外部に面し大きな開口部をとって、十分な採光と通気を果たしています。それは単なる動線としての廊下ではなく、見舞客と患者が扉のすぐそこで触れあう空間でもあります。私たちに馴染みのある縁側廊下、広縁なのです。患者が病室から1歩出て、外を眺めて気分転換できる場であり、これまでのように、患者が面会者と会うために、点滴スタンドを抱えながら長い廊下を延々とゆかなくても良いのです。
一方の扉の向こうはスタッフステーション。壁面腰上部をガラスとすることでいつも看守りが可能。看護動線距離が“ゼロ”であるという特徴をもちます。面会者との動線と切り離した、スタッフの専用動線を確保しています。
③デイコーナーはスタッフステーションと隣接
こちらの病院は198床*の慢性期病院であり、病棟内にデイコーナーもありますが、こちらもスタッフステーションと隣接。スタッフの動線が強く意識されている病棟構造となっています。
*病床内訳:地域一般病棟入院料1:9床、地域包括ケア入院医療管理料1:45床、回復期リハビリテーション病棟入院料1:92床 、療養病棟入院基本料1:52床


スタッフステーションから連続するかたちでデイコーナーを設けました。デイコーナーは患者が談話、休憩したり、食事もとるいわばパブリックなスペースですが、そのエリアもまたスタッフステーションから看守られる場所になりました。ケアの機動性が高まります。
ちなみに、「キラメキテラスヘルスケアホスピタル」は建築物の意匠として、「病院」部門では国内初めて登録されたとのことで、これまた画期的な取り組みですね!
Xでの反響
様々な観点からピックアップしてみました。(今回は該当ポストが非常に多かったので、私の方での一部抜粋でご了承ください。)
診療視点
・セル看護方式を意識した建築
・縁側廊下から患者が無断離院したり、スタッフエリアに患者が入ってきて個人情報が漏洩するなどリスクはケアする必要ありそう
・災害時の病室閉じ込めリスクがあるかも
・中側の動線もベットで移動できるので急性期にも参考になりそう。
・動線むしろ増えているのでは?(医師の方の意見に多かった印象です)
患者視点
病室の両側ドアは辛いかも。廊下越しの採光前提だが、廊下側の扉のカーテン閉めると光入らないのでは?
スタッフ視点
・院内移動時間の削減による、スタッフの余白が生まれやすくなりそう
・朝から晩まで空が見えないから、日中に外の気候が分からず、災害リスクを検知しにくい(放射線科や手術室でのレイアウトに似ている)
・スタッフステーションでの会話が聞こえやすくなり、患者からのクレームが来ないか。扉は防音加工必須で意外とお金かかるかも?w
他にもいろいろありましたが、メインはやはり「移動時間を削減することによるスタッフの生産性向上」にありますね。
どれくらいのアウトカムがこの建築により出てくるのか、非常に興味深いところです。
病院の建て替え問題も今後多く発生してくる中で、一つの選択肢として定着するのか否か、また事例があればチェックしていきたいと思います!