中医協資料を読む(第428回・2019年10月25日):救急医療管理加算の算定

診療報酬改定が来年の4月を控え、中医協も改定に関わりがありそうな項目を精査する段階に入ってきています。

具体的な項目案・点数案が出るのはまだ先ですが、「改定に関わりそうな」トピックをこのブログでも紹介していきたいと思います。

今回のテーマは、「救急医療管理加算の算定」

www.mhlw.go.jp

 

救急医療管理加算とは?

救急医療管理加算とは、入院時に重篤な状態の患者に対して、入院した日から7日間に限り算定ができる項目です。具体的には、以下の2種類の加算が存在します。

〇救急医療管理加算1 900点(1日につき)

以下のアからケまでの状態にあり、医師が診察等の結果、緊急に入院が必要であると認めた重症患者が対象。

ア 吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態 

意識障害又は昏睡

ウ 呼吸不全又は心不全重篤な状態

エ 急性薬物中毒 

オ ショック

重篤代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)

キ 広範囲熱傷

ク 外傷、破傷風等で重篤な状態

ケ 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA 療法を必要とする状態

 

〇救急医療管理加算2 300点(1日につき)

アからケまでに準ずる重篤な状態にあって、医師が診察等の結果、緊急に入院が必要であると認めた重症患者が対象。

 

※参考:施設基準

(1) 休日又は夜間の救急医療の確保のために診療を行っており、医療法第30 条の4の規定に基づき都道府県が作成する医療計画に記載されている救急医療機関であること若しくは都道府県知事又は指定都市市長の指定する精神科救急医療施設であること。

地域医療支援病院(医療法第4条第1項に規定する地域医療支援病院

イ 救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院又は救急診療所

ウ 「救急医療対策の整備事業について」に規定された病院群輪番制病院、病院群輪番制に参加している有床診療所又は共同利用型病院

(2) 第二次救急医療施設として必要な診療機能及び専用病床を確保するとともに、診療体制として通常の当直体制のほかに重症救急患者の受入れに対応できる医師等を始めとする医療従事者を確保していること。

(3) 夜間又は休日において入院治療を必要とする重症患者に対して救急医療を提供する日を地域の行政部門、医師会等の医療関係者及び救急搬送機関等にあらかじめ周知していること。

 

救急医療管理加算の算定状況とそこから見える課題点

f:id:espimas:20191102122136j:plain

平成30年度のデータをもとに、上記のような分析が行われています。厚労省としては、次回の診療報酬改定で以下のような方向性にしていきたいのではと思っています。(→からが筆者考察)

➀救急搬送から入院した患者のうち、救急医療管理加算を算定する患者割合をみると、50~60%未満の施設が最も多かったが、分布にばらつきがみられた。

→救急医療管理加算の算定が可能な患者の対象の定義を明確化し、医療機関ごとの対象患者の算定のばらつきを減らしたいのでは?

②救急医療管理加算を算定する患者のうち、加算2を算定する患者が占める割合をみると、20~30%未満の施設が最も多かったが、分布にばらつきがみられた。

→救急医療管理加算の1の算定が可能な患者の対象の定義を明確化し、医療機関ごとの1と2の算定のばらつきを減らしたいのでは?

これまでは、「救急医療管理加算の対象となるア~クの疾患」「1に準じる状態と判断した場合は2」という大まかなくくりしかありませんでしたが、その対象を明確化しましょうという話です。

具体例として、「意識障害又は昏睡」「呼吸不全又は心不全重篤な状態」「広範囲熱傷」の三つが紹介されています。

 

意識障害又は昏睡」の算定状況

・救急医療管理加算1の算定患者のうち「イ 意識障害又は昏睡」の患者の入院時のJCSをみると、JCS0が16%弱であった。
・加算算定患者のうちJCS0の患者が占める割合を施設ごとにみると、0-5%未満が多かったが、割合が高い施設もあった

f:id:espimas:20191102122900j:plain

JCS(Japan Coma Scale/急性期患者の意識障害レベル)でみると、「意識清明」でも救急医療管理加算1を算定しているところもあるようです。

「呼吸不全又は心不全重篤な状態」の算定状況
f:id:espimas:20191102122905j:plain

NYHA心機能分類でみると、救急医療管理加算1の算定患者のうち「ウ 呼吸不全又は心不全重篤な状態」の患者について、傷病名が心不全の患者の入院時のNYHA心機能分類がレベルⅠが1割弱であったとのこと。

「広範囲熱傷」の算定状況

f:id:espimas:20191102122910j:plain

救急医療管理加算1の算定患者のうち「キ 広範囲熱傷」の患者の入院時のBurn Indexをみると、0-5未満が約35%であったようです。

 

→それぞれの項目で、臨床上の指標に照らし合わせてみると、軽症患者についても重篤な患者として扱い「救急医療管理加算1」として算定していることが分かります。

 

2020年度改定における救急医療管理加算の算定要件(私的予測)

次回の診療報酬改定では、救急医療管理加算1のア~クについて、具体的なスコアや症状の基準が設定され、それをクリアする患者については算定するうえでスコアや症状をレセプトに記載することが要件になるかもしれません。

今回取り上げた内容から言えば、

意識障害又は昏睡→JCSのレベル

・呼吸不全又は心不全重篤な状態→NYHA心機能分類

・広範囲熱傷→Burn Index

みたいな感じでしょうか。私の勤務している病院でも、救急医療管理加算1は結構査定されることも多く、かといって算定基準が明確にはなっていないので、対策が難しい管理料の一つです。全国の病院で算定要件が標準化されていくのは良い傾向だと思います。(標準化された結果、加算1を積極的に取っている病院は減収になることが予測されますが…)

一方で、今回の資料では「救急医療管理加算2の算定基準」に関する案が見えてきませんでした。こちらについては、次回以降の資料で詳細を確認していきたいと思います。

 

※「中医協資料を読む」:過去記事はこちらからどうぞ!

www.medical-administrate.org