先日、このようなポストをしたところ、思いがけず多くの反応をいただきました。
最近の病院関係の記事は「赤字経営」ばっかですが、「過去ベースの運営だと赤字にする」という診療報酬の設計がよく出来てるのだと感じてます。。(もちろん、経済影響で支出が増えてるのもありますが)
— 元病院で働く事務職員 (@medical_admini) 2025年7月2日
大学病院がなくなる日 緩慢な医療崩壊が日本をむしばむ - 日本経済新聞 https://t.co/168rxKIqz1
特に「過去ベースの運営だと赤字にする」という部分に反応いただいた印象がありました。
この辺り、自分の整理も兼ねて、少し深ぼってエッセイ的に書いてみようと思います。
*なお、「利益=収入ー支出」で、収入は~~というところは、このブログを読んでいただいている方にとっては釈迦に説法かと思いますので、割愛させていただきます。
「現状維持は衰退」はビジネスの世界では当たり前
ポストに対する反響でこんなコメントも。
「過去ベースの運営だと赤字にする」というのは、決して医療に限った話ではない。一般企業だって時代やニーズの変化に合わせて運営方法を見直している。
— おかだこうへい|医療職をごきげんに (@okoh627) 2025年7月2日
その点病院は、「黙っていても患者はやって来るもの」という奢りがあると地域のニーズと噛み合わなくなるんだろうな〜。 https://t.co/6Fddn1G8fg
自分の地域の地域医療構想読み込んで先に手を打つ意識は最低限必要だと思う。 https://t.co/vxgivBIyUY
— MITTI (@MITTI12101) 2025年7月2日
「現状維持は衰退だ」という言葉もありますが、ビジネスの社会では最初は独り勝ちの市場に競合がある日突然名乗りを上げてきて、し烈な競争を強いられる、、というのは良くある話。
病院経営の市況としては、
・収入は公定価格で上がらない
・費用は物価や人件費の影響で高騰する
という厳しい市況ではありますが、だからこそ診療報酬の動向や地域での競合となる医療機関・共存すべき医療機関との位置づけを日々明確に整理しつつ、出来るコストダウンに取り組むという姿勢が医療機関経営に求められるのだと思います。
病院経営の世界では、公的な規制が低いビジネスと違って、いきなりゲームチェンジャーとなる競合(新しい病院)が出てくる可能性は低く、診療報酬の動向も厚労省の会議録などで共有はされているので、そういう意味では予測できる未来に備えて粛々と動く、というやり方ができるのは病院経営の良さなのかもしれません。
診療報酬の改定が出たので次はこう動こう、だと院内体制を整えている間に次の改定、となってしまいますので、先回りした準備がとにかく大事そうです。
自社の成長パイに限界があるのが病院経営のややこしさ
一方でややこしいところとして、病院経営では自社の成長パイ(MAXの売上)が病床数と診療報酬によって実質規定されてしまっている、というのが民間のビジネスと大きく異なるところ。
例えば、ユニクロで新しい服を発売してこれは売れる!となったら大きく増産が出来ますが、病院では基本的に病床数を増やすことは認められません。(逆に、最近は病床のダウンサイジングが推進されて行っていますね)
収益=病床数*単価*稼働率、と考えたときに、
・病床数→固定値(場合によっては減らす余地あり)
・単価→8~9割は固定値だが、加算獲得や病床回転数を増やすことで向上の余地あり
・稼働率→患者獲得で上げることが可能
となるので、まずは患者獲得が重要で、そのうえで単価も上げていくが基本戦略となり、患者獲得を予定通りしても病床が空いてしまう場合にはダウンサイジングをしましょう、というのが現在の病院経営の現場で起きていることだと思っています。
現在のパイは大きくせずに中身をいかに筋肉質にできるか?という部分が病院経営に求められることであり、ときには思い切ったダウンサイズが出来るか否かが経営的なセンスが問われる部分になります。(「現状維持は衰退」と「拡張路線を取らない経営」は両立し得る話だと思っています。)
ちなみに、、医療関連産業も苦しい状態は続く?
病院業界が「頑張ってぎりぎり黒字」のラインで動いていることもあり、医療関連産業も苦しい状態は結構続くのかなぁと思っています。
こちらはクリニック向けの話ですが、電子カルテ提供を決断するベンダーが出てきている実態もあったりします。
先日のポストで、こんな話を見かけましたが、おっしゃる通りのところはあるなと。。
日本の病院の半数以上が赤字という現実。
— 伊藤毅 Tsuyoshi Ito | BeyondNextVentures🚀🇯🇵🇮🇳 (@miraibouken) 2025年7月3日
その結果、どれだけ優れた医療スタートアップのプロダクトが出てきても、補助金なしには導入できない。そんな構造が当たり前になってしまっています。
買い手が赤字なら、いくらイノベーションがあっても市場は動かない。…
では、「医療業界」でどのように儲けるか?という点は、かなり前のポストですがこのつぶやきが私としてはかなり印象に残っています。
メドレーを辞めて聞きやすくなったからか医療ITに関するビジネス相談を何件か受けるんですが、そこで毎回言ってるのは医療ITで「めちゃくちゃ儲ける」ためにはやり方は3つしかなくて、①製薬会社のマーケ費用にアプローチする②人材に関することをやる③医療機関と組んで(持って)自由診療やりまくる
— 田中大介/チューリング株式会社COO (@DaisukeMAN) 2023年2月18日
それぞれ、「ああ、この企業は確かにこんなビジネスモデルだな」というのがあるのではないでしょうか。
診療報酬の隙間をうまくハックして出てくるビジネスもありますが、2年単位で更新されていくので、基本そんなに長続きはしません。
診療報酬制度による病院経営に乗っかる形での医療ビジネスは結構難易度が高く、制度に乗ってこない形でのビジネスの道筋がよさそう、というのが何となく頭で考えていることの結論だったりはしています。
あんまり話のまとまりもないのですが、Xで流れてくるポストをもとに自分の頭を整理するために記事を書いてみた次第でした。